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「健康食品」有効利用への課題

2006年07月31日 (月)

 健康志向の高まりから注目を集める健康食品。大衆薬市場がマイナス成長の一方で、健康食品市場は堅調な成長を続けており、2005年度の市場はメーカー出荷ベースで700008000億円との予測である。最近では健康の保持増進の手段だけでなく、予防医学の観点からも注目されているが、一方で様々な問題も浮かび上がってきている。

 厚生労働省は、いわゆる健康食品のうち強壮効果や痩身効果を標榜する健康食品と違法ドラッグを対象とした2005年度買い上げ調査結果を発表した。各都道府県で購入し、国立医薬品食品衛生研究所で分析した結果、強壮用健康食品では134製品のうち27製品から医薬品成分が検出された。

 多種多様な製品が利用される中で、一部で健康被害を起こした例も報告されている。日本弁護士連合会は、今月から全国各地の弁護士会の協力を得て、「健康食品・欠陥商品被害110番」を実施している。電話及び面談相談により被害事例を収集し、健康食品被害・欠陥商品被害に関する実態把握をするのが目的で、日弁連では「いずれ何らかの形で結果をまとめていく」という。

 こうした中で東京都は、健康食品による健康被害の発生を未然に防止し、また拡大防止につなげるため、医療機関(都医師会、都薬剤師会)と連携し、健康影響の情報を幅広く収集していくことを決めた。

 医師や薬剤師は診察・相談時に、都民からの健康食品の利用状況を把握し、健康食品の利用と関連が疑われる体調不良等の情報を都に提供する。都もこれらの医療機関に対し、過去に健康食品の利用と関連が疑われた事例などの情報を提供する。また都民へは医療機関への相談を勧めるため「健康食品を使っていますか?」と題したポスターを作成、都内全域の病院、診療所、薬局等へ配布する予定だ。

 健康食品に関しては、虚偽誇大広告の防止も重要である。▽作用の科学的根拠がない▽試験管内の実験成績や動物実験のデータを、そのまま人に当てはめている▽体験談のみを利用している▽原材料のイメージのみを前面に出している――など、保健機能を期待させる製品も見られる。厚労省がその効果を認めた特定保健用食品は別にして、表示制度のさらなる充実に向けた検討が望まれる。

 各種調査でも、受診時に健康食品の利用について、医師から聞かれたケースはほとんどないという回答が多い。また医師サイドの意識調査では、「聞かれても答えようがない」との結果もある。健康食品が摂取しやすい環境になった一方で、医薬品との相互作用についても一層の対応が求められている。優れた検索データベースはあるが、利用環境の整備が課題でもある。

 健康食品の品質そのものに問題はなくても、その成分が薬の作用や治療効果に影響を及ぼす場合もある。それだけに安全性情報の収集が重要なわけだが、医師会・薬剤師会と連携し、健康食品の適切な利用方法を啓発していこうという東京都の取り組みには大いに期待したい。



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