AIと音声の2軸を提供‐動画・対面の会議にも対応

石川氏
ニューラル機械翻訳エンジンの開発・システム構築を行うロゼッタは、AI自動翻訳ツールと音声自動翻訳エンジンの2軸でサービスを提供している。AI自動翻訳ツール「T-400」は多くの製薬企業で利用され、その機能が評価されている。2020年から提供が始まった議事録・翻訳AIツール「オンヤク」は徐々に利用が広がっている。
MT事業部マネージャーの石川博氏は「製薬企業が持つスピード面の翻訳課題に貢献できるサービスを提供している。外部委託と違い、自分達のスケジュールで翻訳業務を進められる部分は大きな魅力だと思う。『オンヤク』を使えば、海外との会議の議事録を作る時間も短縮される」と語り、自社サービスを利用する利点を強調する。
「T-400」は、自社開発エンジンで、95%の翻訳精度を持ち、2000を超える専門分野と100を超える言語のAI自動翻訳が可能。スキャン画像PDFなどの翻訳にも対応する。
石川氏は「FDAへの提出資料を従来と比べて半分ほどの期間で翻訳、提出できた事例もある。また、医薬以外にも、法務や特許、ITなどの分野で絞って翻訳することもできるため、様々な用途の翻訳に使うことができる」と説明し、使い方の汎用性の高さを説明する。
「オンヤク」は、TeamsやZoom、WebExなどのウェブ会議システムや動画、対面の会議にも対応したリアルタイムの音声翻訳、文字起こしツール。100以上の言語に対応し、音声を高精度で自動認識し瞬時にテキストに変換する。
スマートフォンやブラウザ、PCアプリなど、どのようなデバイスからでも使用できるため、リモートワークが主流の製薬企業の社員にとっても使いやすい。
また、オーバーレイ機能を搭載し、一つの画面で資料を共有しながら利用することが可能となっている。
石川氏は「多国籍間でのやり取りが主流である製薬企業のコミュニケーションを支えられるツールとなっている。オンライン会議などでの意思疎通が容易になり、会議での社員の発言を残すことができるので、議事録などの作成にも役立つ」と海外とのやり取りにおける使いやすさを強調する。
7月に新型コロナウイルス感染症の影響で、海外からの査察がリモート化する場合のガイダンスが出ていることに対し「いつでも海外の規制管理当局のウェブインタビューや資料の提出要求にリアルタイムで応えていかなければならなくなる。そのような時にAI自動翻訳サービスを利用できる仕組みを作っておくことが重要だと考えている」と、リアルタイムに近い形で使える翻訳ツールを導入する必要性を指摘する。
同社は今後、人間翻訳から機械翻訳への移行、翻訳会社と連携した企業ごとの特性に合った人と機械翻訳のハイブリッドソリューションの展開を目指す。さらに、それぞれの企業の特性に応じた翻訳ソリューションの相談、案内も行っていく。
石川氏は「今まで、外国語での会議に参加していなかった、参加を尻込みしていた専門的な知識を持つ優秀な人材が、リアルタイムのAI翻訳サービスを利用することで、そのポテンシャルを発信できるようにしていきたい。言語的ハンディキャップの軽減に世界的に貢献していきたい」と今後の抱負を述べる。