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iPS細胞実用化の医療貢献に期待

2016年9月16日 (金)

 近年、アンメットメディカルニーズへの対応の一環として、再生医療に関する注目度はより高くなっている。中でもiPS細胞の医療応用への関心は非常に大きい。

 iPS細胞の実用化については、同細胞の生みの親である山中伸弥教授が所長を務める京都大学iPS細胞研究所(CiRA)を中心に、様々な医療分野での研究が推進されている。

 2014年9月、理化学研究所の高橋政代氏らのグループが実施した世界初のiPS細胞を用いた加齢黄斑変性の臨床試験もその一つだ。

 治療方法は、黄斑部そのものである網膜色素上皮(RPE)細胞をiPS細胞で作製してシート状にし、その1mm四方をレーザーで切り出して患部に移植するというもの。

 一方、大日本住友製薬は、高橋氏らと連携し、ヘリオスとiPS細胞由来の加齢黄斑変性治療剤HLS001を共同開発している。同剤は、他家iPS細胞由来のRPE細胞をバラバラにしてRPE細胞懸濁液を作製し、患部に注射器で注入する手法を取るため、より広い普及が見込まれている。

 高橋氏らは、他家iPS細胞由来のRPE細胞を用いた2例目の臨床研究を17年前半に実施する予定だ。

 また、RPE細胞の実用化に向けては、今年6月に「自家シート」「他家シート」「自家懸濁」「他家懸濁」の被験者合計20人程度の臨床研究が再開されることが理化学研究所などから発表されている。

 HLS001の臨床試験は、iPS細胞の腫瘍形成がないことを証明する試験方法の決定を受けての非臨床試験計画の見直しによる遅れが出るものの、20年承認を目標としている。

 CiRAで進められているiPS細胞を用いたパーキンソン病や、血液疾患(血小板赤血球の移植)の治療も、着々と臨床研究への準備が整いつつある。

 iPS細胞由来のドパミン神経を作製して患部に移植するパーキンソン病治療の臨床研究は、昨年7月から患者の細胞を用いた自家移植でスタートする予定にあった。だが、他家iPS細胞由来のドパミン神経に変更して、17年開始を見込んでいる。自家iPS細胞から他家iPS細胞への変更は、「生産性の向上」「品質の均質性保持」を目的とする。

 大阪大学が取り組んでいる重症心不全患者へのiPS細胞由来の心筋シート移植治療も見逃せない。

 17年にも臨床入りする予定で、ドナーの少ない心臓移植に代わる治療として期待が大きい。

 慶應義塾大学では、損傷した脊髄の箇所にiPS細胞由来の神経前駆細胞を注入し、運動機能を回復する治療が推進されている。現在、ラビットやサルで良好なデータを得ており、ヒトでの安全性・有用性を確認する段階にある。17年度にも亜急性期脊髄損傷に対する臨床試験を開始する予定だ。

 これらの現況を見ると、山中教授が最重要とする「iPS細胞の医療応用」は、着実に実現化に向けて歩を進めているのは間違いない。iPS細胞実用化による医療貢献に期待したい。




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