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【被験者リクルートメントの現状と課題】オンコロ起点に癌治験支援‐プロトコル立案から相談 クロエグループ

2017年03月29日 (水)

被験者リクルートメントを支援する企業

滝澤氏

滝澤氏

 クロエグループは、73万人のボランティア会員を持ち、患者向けに治験紹介を行うクリニカルトライアル(CT)と、製薬企業が行う治験で被験者リクルートメントを支援するクロエの2社が連携し、患者中心の臨床試験を目指している。癌領域の治験で成果が出てきており、2015年にCTが立ち上げた一般者が癌を学べる情報サイト「オンコロ」を起点に、クロエがそこで収集した患者の声を製薬企業の治験計画(プロトコル)に反映できるよう提案する新たな展開が生まれてきた。ただ、治験活性化に向けては一般者への啓発が最重要課題。治験の意義やその内容を正しく理解してもらうために、クロエグループとして被験者目線で何ができるかを会社単体、業界軸で考えていく方針だ。

 CTは05年に設立し、「治験の情報発信がいずれ必要になる時代が訪れる」(滝澤宏隆社長)との予測から、ボランティア会員をベースに被験者紹介事業を行ってきた。同社が運営する治験情報サイト「生活向上WEB」では一般者向けに最新の治験情報を発信し、東京・大阪・福岡の被験者募集に特化したコールセンターでは、日本最大規模となる100席以上のオペレーターが患者やその家族などとコンタクトを取ってきた。

安藤氏

安藤氏

 さらに09年には、製薬企業向けに被験者リクルートメントを支援するクロエを設立し、CTの事業基盤を活用して、製薬企業と被験者をつなぐサービスも生まれてきた。「治験支援事業を行う上で最初に求められるのが倫理感で、大事に事業を進めてきた結果、製薬企業からの取引が増えた。日本CRO協会の賛助会員に加盟できたのも大きい」(クロエ安藤昌社長)。信頼性の確保で事業が軌道に乗り始めた。

 昨今、医療機関に通院していない潜在的な患者を対象とした治験(例:過敏性腸症候群/軽度認知障害等)の場合、治験の被験者リクルートメントは院外の患者を中心とした治験広告に頼らざるを得なくなる。治験が過密になれば、被験者募集自体が「とにかく集めること」を中心に考えられ、ともすれば被験者保護の観点から外れた募集活動がなされる可能性がある。そういったことが無いように、正しい広告表現や募集プロセスの遵守に注力してきた。

 そんな中、最大の難所になっているのが癌領域の治験だ。治験数が増える一方で、ボランティア会員や治験広告を活用しても被験者を集めることが難しくなり、製薬各社が被験者の組み入れに苦戦していた。患者による自発的参加が頼りとなるが、「癌だけは治験情報を発信できていなかった」と当時の状況を話す滝澤氏は、抗癌剤治験の経験が深い臨床開発モニターをCTに迎え入れ、癌に特化した情報サイトのオンコロを開設した。

 オンコロを閲覧する患者全体の7割がステージIII/IVの進行癌患者で情報を強く欲しており、これまで延べ700人以上が掲載している治験情報に対する参加要望があり、今年に入ってから月平均で100~200人の引き合いが来ている。最近では医師がオンコロを閲覧し、自らの患者の治験参加についての可能性を相談されるという、逆紹介も増えている。

 ウェブサイト上での展開に加え、実際に患者を集めた癌に関するセミナーを月2回開催。肺癌や胃癌などの主要な癌種のみならず、患者数が少なく、一般向けに発信されている情報もあまりない希少癌セミナーも国立がん研究センターの希少がんセンターと共催している。今後は、アンメットメディカルニーズが強く、社会的にも影響が大きい認知症などの中枢神経系領域や希少疾患にも広げる考え。

 4月からはオンコロにメディカルサポーターとして、著名な医師7人が加わり、滝澤氏は「癌に関して正確な情報発信を強化したい」との方向性を示す。

 クロエグループとしてやるべきことは、治験に参加する環境の醸成だ。「治験に理解を示すといわれる一般者の割合は20%に過ぎず、これを30~40%まで増やすことで治験に参加する患者さんを増やしていきたい」と安藤氏。ボランティア会員は現在の73万人から5年後には400万人への拡充を目指す。究極の目標は、日本国民の誰もが治験を知っており、患者が自主的に治験に参加し、被験者募集業務自体が必要なくなる社会。その社会実現には、クロエグループだけでは限界があり、いろいろな会社と多く連携することで、被験者のプラットフォーム構築を目指す。



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