自動ポストエディット機能開発‐10月開催の翻訳祭に出品

本間氏
日本特許翻訳は民間企業の知財部や翻訳大手で導入が進んでいる統合型翻訳支援ツール「Pro Translator EXPRESS」の提供に加え、LLM(大規模言語モデル)のインテリジェンス(インストラクションの理解力と理解した結果からの推論)を翻訳に生かし、ポストエディットを自動化する「Post Edit Pro」という新サービスを開発している。納期短縮と作業全体のコスト削減につながるこの新サービスについて、10月に開催される翻訳祭に参考出品をする予定で、特許・商標出願中だ。同社の本間奨社長は「自動ポストエディット機能は、翻訳支援ツールを大きく変えるものだ。医薬・医療業界をはじめ、特許分野などの産業翻訳中心にサービスを展開していきたい」と意欲を示している。
同社が昨年7月にリリースした「Pro Translator EXPRESS」はmemoQオンプレミスサーバーを翻訳支援ツールのコア部分に用いて、独自UIにより誰でも容易に使用できる、翻訳メモリ・用語ベース・NMT機械翻訳・LLMを統合化したサービスだ。原文を翻訳しやすいよう独自の前処理を行い、翻訳後の後処理も行うことができるのが特徴で、特許、医薬、サイエンス文献について業界トップレベルでの高精度な翻訳が可能となっている。
そしてさらなる翻訳業務の効率化を目指して現在同社が開発中なのが、10月にリリース予定の「Post Edit Pro」だ。NMT(機械翻訳)の課題であった翻訳の誤りを、インテリジェンスの高いLLMを利用することで自動でポストエディットを行うことができるサービスである。
NMTとLLMを比較すると、分野特化型NMTは、訳語適切性と翻訳速度が優れている一方で、未知語、誤訳、湧き出し、訳抜けなどの不具合などが避けられず、翻訳者はポストエディットに多くの時間を割くことが必要となっている。LLMはNMTに比べると精度が低く産業翻訳には適さないものの、追加学習ができ、合理的な推論を元に翻訳を行うことができるというメリットがある。そこで同社はNMTの翻訳誤りをインテリジェンスの高いLLMが自動で修正できることに着目。最終的に現状では翻訳をNMTで行ってから、LLMで自動ポストエディットする組み合わせがベストであると判断し、それを具体化する形でPost Edit Proを開発したという。
Post Edit Proのインテリジェンスは80点レベルとなっており、20点程度の誤りを含むことを前提としていることから、最終的なバイリンガルチェッカーと修正作業は必須となる。今後同システムはさらに上のインテリジェンスレベルを目指しており、25年までにはレベルを91点から92点にまで上昇させ、最終的には翻訳における人的な負担をバイリンガルチェッカーと最終検品の段階のみとしたい考えだ。
そうすることで翻訳会社のワークフローでは、翻訳者のポストエディットを省略することができるため、大幅な納期短縮と作業全体のコスト削減につながることが期待できる。
本間社長は、「Post Edit Proは、当社が昨年行ってきたLLMのオプションサービスの集大成のようなものだ。翻訳支援ツールはLLMの登場で、大きく変貌しつつある。翻訳支援ツールという舞台の上の役者として、これまで翻訳メモリ・用語ベース・NMTがあったが、今後主役の座はLLMになり、その脇役が翻訳メモリ・用語ベース・NMTになる。自動ポストエディットができたからといって、翻訳ワークフローでのバイリンガルチェッカーは外せない。チェッカーと最終検品者の負担は増えるかもしれないが、工程全体のコストは下がると同時に納期が大幅に短縮できる。お客様に喜んでもらいたい」とメッセージを送る。
日本特許翻訳
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