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医療壊す財政フレーム見直しを

2025年04月25日 (金)

 2024年の医療機関の倒産が64件、休廃業・解散が722件と過去最悪となった(帝国データバンク調べ)。25年も「倒産件数は高水準で推移することが予想される」という。薬局・ドラッグストアの倒産件数も24年は過去10年で最悪だった。処方箋を応需する関係から、今後も医療機関の倒産と無関係でいられない。

 この悪い予想は当たるのではないか。物価・賃金の上昇トレンドから、医療分野は取り残されているからだ。物価上昇率は3%超、主に大企業の賃金引き上げ率は5%超という状況に、診療・調剤報酬、薬価の改定は追いついていない。薬価は最低薬価の引き上げなど配慮はあったが、引き下げが前提のままだ。

 その不利益は、医療現場、流通・販売現場、製造現場の最前線が引き受け、ひいては患者に影響を及ぼす。医療機関の倒産、休廃業・解散の主な要因には材料費・人件費の増大、コロナ関連融資の返済開始がある。そして、その結果何が起こるのか。帝国データバンクは「資金余力がなくなった施設は設備の更新ができず、給与・労働条件が悪くなり、スタッフが定着せず、サービス品質が低下。結果として、さらなる受診者の減少を招くという負のスパイラルに陥る」と分析する。

 なぜ、こんな事態を招くのか。国の社会保障予算を高齢化の伸びの範囲内に抑制する政府方針があるからだと考える。この政府方針、言わば「財政フレーム」の見直しを求める声が医療関係団体、製薬関係団体から揃って上がっているのは当然だ。

 現行の財政フレームにより、社会保障予算の抑制額の平均7割以上が薬価改定財源により賄われてきた。現行フレームの中で診療報酬・調剤報酬改定は行われている。報酬改定は、引き下げを前提とする薬価改定で生じる薬価差の一部が充てられる。

 しかし、その仕組みは持続可能か。薬価調査による平均乖離率(薬価差)はかつて8%超だったが、流通当事者の努力で圧縮が進み、今や5.2%だ。製造、流通・販売など現場が、わが身を削って捻出している財源に頼れる状況ではなくなりつつある。

 かつては報酬を引き上げても十分な技術料を手当てできないことから、薬価差は「潜在技術料」と言われた時期もあった。だが、報酬への手当てだけでなく、「薬価差の還元は国民へ」という近年の政府方針でさえ、薬価引き下げが一因で薬不足が起きるなど、医療の質向上につながっているのかは疑問である。

 つまり、財政フレームの見直しが必要だ。見直しにより物価・賃金の上昇を踏まえた報酬引き上げ、薬価の機械的引き下げ廃止へ予算を医療の質向上に向けて振り向ける。薬価改定ではイノベーション評価、安定供給確保策を充実する。「骨太の方針2025」にはインフレ局面に合った「財政フレームの見直し」の明記を望む。



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