
清水昇社長
CSO最大手のクインタイルズ・トランスナショナル・ジャパンが抱えるCMR数は約1800人と、製薬企業準大手と同等の規模を誇る。成長が続くCSO業界の先導役として、グローバルでの実績と国内で培ってきた経験を組み合わせ、クインタイルズ管理型のCSOサービスを提供している。清水昇社長が「専門性を武器に業界常識を打ち破っていきたい」と語るその背景に、2015年に実現を目指す“MR3000人体制”の構想がある。
過去5年間二桁成長を続け、売上・利益共に日本国内で設定された目標をクリアした。CMR数は約1800人に拡大し、CMRの離職率も10%以下までに改善したことで、優秀な人材を多く抱えることができるようになった。CMRの約4割が10疾患領域以上を経験し、プライマリケアだけでなく、セカンダリケアの癌や中枢神経系領域でも多くの実績を上げている。
例えば、抗癌剤を使用する場合、副作用の発現を十分にモニターする必要があるが、皮膚科・消化器領域の薬剤を扱った経験のあるMRであれば、皮膚障害や消化器疾患等の副作用リスクについて情報提供できる。そこでクインタイルズMRの多領域経験が生かされる。
癌・中枢神経系領域での受託体制を確立していくために、人材供給力を高める。新薬上市時に製薬企業の営業部隊とCSOを組み合わせた垂直立ち上げによって、製品売上を早期にピークに導く戦略が普及してきた。CSOにも一定の事業規模が求められることから、15年にはMR3000人体制に強化する。
CMRの質と量が揃えば、CSO主導型のサービスを提供できるようにできる。最近では、営業所全てがクインタイルズ社員という「クインタイルズマネージド」を受託できるようになった。顧客主導人員補充ではなく、われわれが独自にプロジェクトを運営するサービスで、エリア情報を収集した上で現状の課題を分析し、顧客に対して最適な営業戦略を立案し、われわれのCMRを使って実績を上げる。実際、成績下位の事業部をトップまでに引き上げた。今年は特定の営業所だけでなく、全国で同時展開できるだけの大規模受託を目指す。
それに伴って、若手層をマネージャーへと育成する教育体制も必要になる。財務分析・人事戦略など経営目線を持った人材を鍛えていく。彼らにはマネージャーとして、プライマリケア、癌・中枢神経系、開業医、大学病院などの市場領域や、内資・外資の様々な製薬企業の手法、MR数十人から100人超えのプロジェクト規模まで計画的に経験を積ませ、組織として成功体験を共有し、プロジェクト運営の専門家に育成する。
一方、MRに依存しない新たなサービスも強化していく。疾患啓発・患者掘り起こしを目的に、看護師免許を持った人材がクリニカル・エデュケーターとして医療従事者に対して患者への治療を啓蒙するHMSサービスだ。従来とは異なる副作用が発現する可能性がある新規メカニズムの薬剤など、病院・診療所などのコメディカルに対して適正使用に向けた服薬指導をサポートする。患者の相談を受けることが多いコメディカルにとって大変有益だと評判だ。
CSOの需要は拡大してきた。当初は、欠員補充やプライマリケアにおけるSOV補完要員でしかなかったが、新薬垂直立ち上げのための大規模部隊、さらには経験MRによる癌・中枢神経系疾患領域へと需要が広がっている。今後は、「クインタイルズならば、未経験MRでも癌・中枢神経系疾患領域を任せられる」と言われるだけのエビデンスをつくり、業界の常識を打ち破っていく。マーケットリーダーのわれわれに与えられた役割だと認識している。
将来的には、日本国内に拠点を持たない製薬企業が市場参入する場合に、クインタイルズのCROとCSOを組み合わせた開発から営業・マーケティングまでの一括受託体制を目指している。クライアントのニーズを深く理解し、5年、10年先を予測した新たなサービス開発にもチャレンジしていきたい。
この記事は、薬事日報2013年5月17日号に掲載された記事です。