日本製薬団体連合会会長 野木森雅郁

昨年を振り返ると、4月に待望の日本医療研究開発機構(AMED)が発足し、わが国における基礎研究成果を実用化につなぐ一貫した研究マネジメント体制が確立しました。多くの実用化研究支援プロジェクトが公募され、昨年末には産学官共同創薬研究プロジェクトの採択研究が決定するなどの進捗が見え始めており、これまで企業単独では難しかった共同研究体制の構築が着実に進展していることを非常に喜ばしく感じております。
このような中、10月には大村智先生のノーベル医学・生理学賞受賞の朗報も飛び込んできました。昨年は医療分野の研究開発を国策として優先するわが国の姿勢と、世界に誇る日本の創薬力を内外に強く印象づけた1年と言えます。
同時に、今後の製薬業界にとっては極めて重要な政策決定が行われた年でもありました。6月に閣議決定された「骨太の方針2015」では、「医薬品等に係る改革」として、▽基礎的な医薬品の安定供給▽成長戦略に資する創薬に係るイノベーションの推進▽真に有効な新薬の適正な評価等を通じた医薬品産業の国際競争力強化――と、過去に例を見ない積極的かつ具体的な項目が盛り込まれると共に、後発品に係る数量シェア80%達成時期については「2018年度から20年度末までのなるべく早い時期」という業界に与えるインパクトが非常に大きな方針が示されました。また、同じ6月には厚生労働省の「国際薬事規制調和戦略」およびPMDAの「国際戦略2015」も公表されました。国際的な薬事規制調和を通じて信頼性の高い日本の医薬品の国際展開がさらに加速化することが期待されます。
このように、昨年は製薬産業の構造変化を大きく促すトリガーとなる1年と言っても過言ではなく、新薬企業や後発品企業に限らず医薬品に関わる全ての企業は、早急に自社の事業戦略を見直し、環境変化に着実に対応していく必要があると認識しています。
今年5月には伊勢・志摩サミットが開催され、日本を舞台に国際保健医療に関する議論がなされます。世界の人々の健康社会の実現における日本の役割への期待はますます大きくなり、われわれ製薬業界としては、革新的医薬品の創出や高品質な医薬品の安定供給などを通じ、確実に国際保健医療に貢献できるものと信じています。