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法改正、社会変化対応への一歩に

2019年12月20日 (金)

 改正医薬品医療機器等法が4日に公布された。改正の趣旨は、国民のニーズに応える優れた医薬品、医療機器等をより安全・迅速・効率的に提供すると共に、住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができる環境を整備することとされている。

 薬剤師に対しては、調剤時のみならず必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行うことを義務化するほか、入退院時に他の医療施設と連携して対応できる機能を持つ「地域連携薬局」、癌などの専門的な薬学管理に対応できる機能を持った「専門医療機関連携薬局」に分類し、都道府県知事が認定すれば名称表示できる仕組みも導入される。

 特に注目したいのが、専門医療機関連携薬局である。癌医療が1カ所の病院で行うものから、患者の家族も含めて地域全体で支える仕組みへと変わりつつあり、その役割が期待される。

 既に医療機関では、癌薬物療法の高い知識と技術を持つ「がん専門薬剤師」が活躍しているが、それはあくまで病院内における活動であった。多くの病院薬剤師は、入院患者への対応で手一杯な状況となっており、「がん専門薬剤師」が医師と相談しながら外来化学療法を行い、薬剤師外来などで患者をフォローしても、病院に来院した時にしか対応できないというジレンマがあったとも聞く。

 退院して地域に移行した癌患者が安心して生活できるようにするためには、在宅も含め薬局でケアできる体制の構築が不可欠となる。癌医療に関する専門性を身に付けた薬局の薬剤師のニーズが高まることは論を待たない。

 薬局では、副作用のモニタリングをはじめ、オピオイド製剤を調整して用いながらの疼痛コントロール、吐き気をコントロールし、食欲を失わないようにするための制吐療法といったアプローチが考えられる。

 こうした取り組みを通して患者のQOLを向上させ、全身状態が良くなれば、治療効果の大幅な改善も期待できるだろう。地域の薬剤師が癌医療にコミットできる部分は大いにあると言える。

 既に、専門医療機関連携薬局で活躍する薬剤師の育成を想定し、日本医療薬学会が「地域薬学ケア専門薬剤師」制度を立ち上げている。2020年度診療報酬改定では、医療機関から共有されたレジメンを用いた薬局での服薬指導、薬局から医療機関への服薬状況のフィードバックを行うことの評価も提案されるなど、法改正に伴う動きも出てきている。

 政府内では、後期高齢者となる75歳以上の窓口負担を1割から2割に引き上げる制度改正も議論されている。医療資源が限られ、必要かつ十分な医療サービスをどう提供していくのかが問われる中、今回の法改正を社会変化に対応した薬局の姿に近づけるための一歩としたい。



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