米食品医薬品局(FDA)は9月29日、不正確な臨床検査に関する報告数が増加の一途をたどっていることを受け、今後、実験室で開発された検査(laboratory developed test;LDT)の安全性と有効性を確保するための規制を導入することを表明した。
FDA長官のRobert Califf氏は、「最近、精度が確証されていないのにLDTとして提供される臨床診断検査が増えている」と指摘し、がん、心疾患をはじめとする多くの疾患に対するハイテク検査の質を監視する必要性が生じている状況であることを説明する。同氏は、今日の医療に関する判断の70%は、このような臨床検査の結果に基づいてなされているとする米疾病対策センター(CDC)の情報を踏まえ、「これらの検査が現代医療に果たす役割の大きさを考えると、その正確さと妥当性は公衆衛生に大きな影響を与える」と懸念を示す。
LDTは体外診断用医薬品・医療機器(in vitro diagnostics;IVD)の一種で、単一の臨床研究室で人体から血液、唾液、組織などの試料を採取して処置し、検査を行えるように設計されている。LDTは体内のタンパク質やグルコース、コレステロール、DNAなどの測定/検出を可能とし、得られた情報は疾患や状態の診断、モニタリング、治療の決定などに役立てることができる。溶連菌感染症や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの診断のために病院や薬局で使用される、より一般的な検査は、すでにFDAの市販前審査を受けている。しかし、その他のハイテク研究所で分析に用いられている何千ものLDTは、FDAの監督下にない。これらのLDTは、高度に洗練されたものが多く、がんや性感染症、その他多くの疾患の特定に用いられている。
LDTが登場したのは数十年前のことであるが、今や、その使用状況は大きく様変わりした。FDAは、「1970年代と1980年代には、LDTの多くは低リスクで、種類も少なく、地域の患者集団の特定のニーズに用いられるようなものだった。その後、商慣行の変化や試料輸送の迅速化などを受け、現在では多くのLDTが、より広範な地域でより多様な人々に使用されるようになり、また、大規模な検査施設が全米各地から送られてくる検体を受け入れている。さらに、LDT自体もハイテク機器やソフトウェアへの依存度を高め、大量に使用され、重要な医療上の意思決定の指針としてより頻繁に使用されるようになっている」と説明する。さらに、消費者に直接検査を提供する企業も現れ、問題のある検査報告が増えていることも指摘。その上でFDAは、FDAが認可した検査やFDAの要件を満たす検査に比べて、正確な検査結果が得られない可能性や、性能の低いLDTが存在することに懸念を抱いていると述べる。
FDAは、不正確な検査結果は、不必要な治療の開始や適切な治療の遅延や見送りにつながるなど、取り返しのつかない結果を患者にもたらす可能性があると指摘する。実際に、誤ったLDTの結果に基づいて心疾患の治療が過剰/過小になったり、がん患者に不必要な治療が行われた事例があるほか、自閉症、アルツハイマー病、ある種の希少疾患などの重大な疾患と誤診されたケースもあるのだという。
AP通信によると、FDAが最初にLDTに対する規制の設置を提案したのは10年以上も前のことで、Theranos社製の血液検査が全く機能しないことが明らかになったことがきっかけだったという。FDAは、新たな監視体制は、「検査市場の不当な混乱」を避けるため、数年かけて段階的に導入する予定だとしている。FDAは、新たに規制を設けることで、虚偽や誤解を招くような主張で宣伝された安全性と有効性に欠ける検査の実施件数が減り、またそれらの検査結果に基づき行われる治療も減るため、医療費が削減され、正味の費用対効果が向上する」と主張している。(HealthDay News 2023年9月29日)
Source
https://consumer.healthday.com/diagnostic-tests-2665764297.html
(参考情報)
More Information
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-proposes-rule-aimed-helping-ensure-safety-and-effectiveness-laboratory-developed-tests