自動払出ロボ病院で初導入‐病院統合へ業務を再構築
大阪市天王寺区に位置する大阪国際メディカル&サイエンスセンタ―(旧社会医療法人警和会)が運営する第二大阪けいさつ病院の薬剤部は、薬剤師の調剤業務の効率化に向け、国内の薬局約100軒で導入実績を持つ日本ベクトン・ディッキンソン開発の自動入庫払出ロボット「BDRowaVmaxシステム」の採用を病院で初めて決定し、今年3月から導入している。来年1月には本院の大阪けいさつ病院と統合し、新病院の稼働を予定しており、統合に向けた薬剤部のリビルド(再構築)を見据えた取り組みを進めている。
非薬剤師の活用見据える
大阪けいさつ病院は580床で、急性期の総合病院だが院内処方が96%を占めるのが特徴。急性期医療に特化しているため、患者が病状安定後は地域のかかりつけ医での診察・投薬の流れを促すために、昨年3月末で投薬外来を廃止。第二大阪けいさつ病院でも同様の動きが進められている。
両病院の薬剤部長を務める村田久枝氏は「統合後の薬剤師数は約60人。薬剤部での対人業務や調剤業務以外にも、病院の方針に基づく救急医療の現場での病棟薬剤業務実施加算の算定を考えると、セントラル業務のスマート化が課題だった」と話す。調剤業務の機械化、システム化、非ライセンス者の活用を検討する中で、薬剤の自動入庫払出ロボット「BDRowaVmaxシステム」の採用を決定し、今年3月に第二大阪けいさつ病院の調剤室内に導入した。
同機は、入庫とピッキング業務を自動化し、安全性と業務効率を改善する。ピッキング時には、患者別にどのロット番号の薬剤を払い出したかを記録する「トレーサビリティ」を装備。薬剤の使用期限をチェックして無駄のない先入先出の入出庫で、薬剤の廃棄コスト削減にも貢献。納品から出庫まで、薬剤管理の効率化実現をサポートする。
医薬品は箱単位で管理。入庫時にはGS1コードを読ませるだけで、使用期限・ロット番号も記録するため在庫管理を効率的に行える。また、庫内はフリーロケーションで、隙間なく収納でき、出庫もロボットアームが瞬時に正確に医薬品を取り出す。再入庫時には、薬剤残数の情報が載った再入庫用ラベルを箱に貼り、そのバーコードをロボットに読ませて入庫する仕組みだ。
病院での導入は国内初となるが、村田氏は「来年の新病院稼働時の機器設置では、十分な検証ができないため、その前段階で導入し、4月から5月にかけてシステム連携を図り、薬剤師以外の補助員でも作業が可能となるルール作りに取り組んでいる」と話す。
新病院への移転時には、現在稼働している実機を移設し、オプションとしてベルトコンベア付きの全自動入庫装置も合わせて設置する計画。また来年1月以降の本院では、薬剤部内の作業を機械化・細分化して、障害のある人でも安心して働ける環境を積極的に構築していく予定という。
村田氏は「660床の入院患者の内外用薬、1日700~800枚の外来処方箋に対して、薬剤の格納やピッキングの作業を補助員や障害者雇用のスタッフへ任せることで、薬剤師は、病棟業務や抗癌剤のミキシング業務などにシフトすることが可能になる」と展望する。
BDRowaVmaxシステムを選んだ理由について村田氏は「今後、業務全般を自動化したいというイメージにフィットした。薬剤を取り間違えない精度の高さに加え、ピッキング時にも、ダブルアーム仕様のため、イメージする処方量が賄えること。さらに、自動入庫装置も装備できるほか、われわれのイメージする薬剤箱数や運用に合わせて、本体の大きさをカスタマイズできることが大きな魅力だった」と評価する。
さらに在庫調査や期限切迫確認など、薬剤部内で管理していた業務の軽減も図れているという。「従来は毎月、時間をかけ、工夫しながらデッドストックがゼロになるよう管理しているが、それをボタン一つで1錠単位まで把握可能になることはストレスも軽減され、省力化の効果を大いに期待している」と村田氏。製薬企業からの自主回収の際にも、ロットごとの薬剤を瞬時に判別することが可能なことを利点として挙げる。
現在、第二大阪けいさつ病院薬剤部に設置しているBDRowaVmaxシステムのスペックは幅が約1.6m、高さが約2.5mと標準サイズだが、奥行きは約10mある。村田氏は、「来年1月に移行した際には、100錠換算で常時7000~8000箱を動かしながら、1万箱を上限に格納を考えている」と、カスタマイズしていることを説明する。
今年4月から「医師の働き方改革」がスタートし、医療現場では医師の業務の一部を薬剤師を含む多職種に移す「タスクシフト」が進んでいる。2019年に厚生労働省が通知した「調剤業務のあり方について」では、薬のピッキングなどの対物業務は非薬剤師や機器に任せ、薬剤師は、本来の業務である患者の適正な薬物治療(対人業務)へ注力することを求めている。村田氏は「対物業務が軽減されることで、PBPMなどを通じて薬物治療の広い範囲を薬剤師が担えるようになれば、医師の働き方改革を加速させることも可能」と話す。
来年1月1日の新病院のスタートに向けた中での薬剤部を見据え、「想定できることは全て対応しながら、この半年間でいかにリビルドしていけるか、見極めていきたい」と展望している。
第二大阪けいさつ病院(日本ベクトン・ディッキンソン)
https://www.bdj.co.jp/mms/bd-rowa.html