今月17日から23日までの1週間は、今年度の「薬と健康の週間」として医薬品の適正使用や薬物乱用防止に向けた一般生活者への啓発活動が全国の自治体や薬剤師会等を中心に展開されている。
医薬分業推進の意義やお薬手帳の普及促進、さらに地域のファーストアクセスの場としての薬局・薬剤師が果たす機能や役割をアピールするなど、時代の変遷により中心に据える内容も変化してきた。
一方で、麻薬、覚醒剤をはじめ大麻や危険ドラッグ等の危険性や乱用が健康に及ぼす影響について、青少年に対する薬物乱用防止の啓発活動も大きな位置づけとして実施されている。
ここ数年、覚醒剤や大麻事犯とは別に懸念されるようになってきたのが市販薬のオーバードーズ問題である。若年者を中心に拡大しており、厚生労働省研究班が昨年度に実施した全国住民調査では、過去1年以内の市販薬乱用経験者数は約65万人と推計されている。
覚醒剤や大麻と異なり使用や所持で検挙されることはなく、店頭やネットで購入できる市販薬だけに、本来の効能効果とは違う大量服用の防止や危険性の啓発が喫緊の課題になる。
現在、市販薬の乱用の出発点となり得る医薬品販売について、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会では、店頭販売時の規制について検討が進められている。現行でも薬局や店舗販売業では、乱用の恐れのある医薬品成分を含む市販薬の販売時に購入者が若年者であれば、氏名や年齢、適正数量を超える購入時にはその理由、他店での購入状況を確認する規制が設けられている。
ただ、医薬品販売時に氏名や購入履歴の記録は行われていないことが多く、頻回購入などの把握も難しいといった実態もあるようだ。
市販薬の適正使用に向けては、医薬品販売の現場だけではなく、川上である製造販売業者においても取り組みが進められている。自社の特定ブランドが乱用目的で使用されている実態を把握したある企業は、東京都、大阪府、愛知県のドラッグストア315店舗で盗難防止と薬剤師などの有資格者との接点につながる当該製品の空箱設置を展開した。
その結果、ヒアリングできた店舗のうち56%の店舗で盗難がなくなり、73%で複数購入がなくなった。そのほか、54%の店舗で乱用者の来店が減少したという。
こうした市販薬乱用に対する取り組みを全ての企業で実践していくのは難しいかもしれないが、一定の成果が得られたという意味では今後の展開の参考になるだろう。
同週間においては、医薬品販売に従事する薬剤師、登録販売者からも、生活者に対し市販薬の適正使用についての情報提供を通じて、オーバードーズを防ぐゲートキーパーとしての役割を果たせるような取り組みに期待したい。