統合失調症治療剤「ルラシドン」の最初の第III相試結果が、米国サンフランシスコで開催された第162回アメリカ精神医学会年次総会で発表された。急性期の統合失調症患者を対象に、6週間投与で有効性と安全性を検討した結果、プラセボ群に比べ、ルラシドン80mg投与群で、有意な有効性が確認された。ルラシドンは、大日本住友製薬がグローバルで自社開発し、海外進出の足がかりとする期待の新薬で、その臨床試験結果が注目されていた。
大日本住友製薬では、全世界規模で2000人以上の患者の参加を得て、統合失調症治療におけるルラシドンの有効性と安全性を評価する三つのPEARL(Program to Evaluate the Antipsychotic Response to Lurasidone)試験を行っている。それに加え、長期安全性試験の「PEARLセーフティ」も実施しているが、試験結果が発表されたのは、最初の第III相試験となるPEARL1試験。
その成績によると、ルラシドン80mg/日投与群は、試験終了時点においてプラセボ投与群に比較して有意に高い有効性を示した。さらに、投与2週後から6週後の間の全ての評価時点で、主要評価項目の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)と、副次項目の臨床における全般的評価尺度(CGI‐S)の両方で、プラセボ投与群よりも高い改善を示した。
副作用についても、既存の統合失調症治療剤で有害事象とされる体重増加、脂質や血糖値の上昇への影響は、プラセボ投与群と同程度だった。
同社では、PEARL1試験で良好な結果を得たことから、今年秋までに、[1]自社だけの販売[2]他社とのコ・プロモーションによる販売[3]販売力を持った企業の買収‐‐の中から、ルラシドンの米国における販売方法を決定する。
PEARL1試験の結果について、ヘンリー・ナスラーラ米国シンシナティ大学医学部精神神経学神経科学教授は、「ルラシドンは、統合失調症の症状を安定化させ、効果的に治療するための、有効性、安全性および忍容性を併せ持った新しい薬剤として期待できる」と評価している。
多田正世大日本住友製薬社長は、「当社はルラシドンの開発に注力しており、一連の第III相試験の完了とそれに続く米国FDAへの承認申請を楽しみにしている」とコメントしている。
FDAの承認申請には、二つの第III相試験結果が必要とされる。PEARL2試験結果は今秋、PEARL3試験結果は来年に明らかになる見込みで、同社ではルラシドンのFDAへの承認申請を来年中に予定している。