【医学アカデミーグループ薬学ゼミナール】臨床で活躍する薬剤師を目指して‐第112回国試合格に向けて

2026年06月20日 (土)

学校法人医学アカデミーグループ
薬学ゼミナール学長
木暮 喜久子

木暮喜久子氏

 厚生労働省は3月25日、2022年度に改訂された薬学教育モデル・コア・カリキュラムに対応し、29年度実施の第115回薬剤師国家試験(24年度入学生)から適用される「薬剤師国家試験のあり方に関する基本方針」を公表しました。改訂コアカリでは、科目や領域の壁を越えた総合的理解力や応用力が求められ、臨床に沿ったより実践的な能力を身に付けるための薬剤師教育が示されています。公表された国試の基本方針もその内容に沿ったものでした。

 臨床現場では、地域医療、在宅医療、タスクシフティングなどの場面で多職種と共通言語で情報共有し、患者背景を踏まえた提案ができる薬剤師が求められています。今年2月に実施された第111回薬剤師国家試験では、症候や検査値、処方箋などの患者背景に加え、「妊娠を希望している」といった患者の希望にも対応して解決策を導く、医薬品提案に関する問題が多く出題されています。次回の第112回国試に向けて、薬学ゼミナールの自己採点(薬ゼミレコード)の登録者1万0980人(合格発表後の3月31日現在)のデータを基に、新傾向も踏まえた国試の出題傾向を解説します。

第111回国試の振り返り

 厚生労働省が発表する国試合格ラインは相対基準であるため、問題の難易度や受験生の状況で変動します。第111回は採点除外が2問あり、合格ラインは全問題の得点を343点満点で換算した213点(正解が3つとして採点された問題を1問含む)となりました。第111回の合格ラインは、第109回(210点)よりやや高く、第110回(213点)と同じになりました。

 第111回の合格率・合格者数(表1)を第110回と比較すると、6年制新卒の合格率は86.25%で、第110回(84.96%)より高くなりました。一方、6年制既卒の合格率は41.33%で、第110回(43.94%)より低くなっています。

表1 第111回国家試験の合格率・合格者数

表1 第111回国家試験の合格率・合格者数

 禁忌肢問題選択数は「2問以下」でしたが、薬ゼミレコードのデータによると第111回の合格者数に禁忌肢による影響はなかったと思われます。

薬学ゼミナールの自己採点(薬ゼミレコード)による分析

 薬ゼミレコードによる分析では、第111回の正答率60%以上の問題数は合計234問で、第110回(240問)と比較すると少ないですが、例年通り合格ライン(第111回:213点)を上回っています。

 出題形式別に3回分の国試の平均正答率を比較(表2)すると、必須問題では第111回が若干高く、理論問題では第111回と第110回は同等で第109回より若干低く、実践問題は第111回が低くなりました。必須問題では「全問題への配点の70%以上で、かつ、構成する各科目の得点がそれぞれ配点の30%以上であること」という合格基準(いわゆる足切り)が定められていますが、第110回に引き続き、第111回でも該当者は少ないことが予想されます。

表2 第109~第111回国家試験の出題形式別平均正答率(得点)比較

表2 第109~第111回国家試験の出題形式別平均正答率(得点)比較

 さらに各科目別に第111回の正答率(表3)を見ると、必須問題では「化学」と「実務」で正答率が70%を下回り、「薬理」では90%を上回りました。第109、110回で約86%と高かった実務の正答率は、多職種連携の職種として言語聴覚士を選択する問88(37.3%)と、クリニカルパスについて問う問89(16.4%)の正答率が低かった影響で、69.8%と低下しています。例年通り難易度の高い理論問題の「物理・化学」の正答率は50%を下回り、特に物理では2年連続で40%を下回りました。基礎科目の難易度が高い状態が継続しています。実践問題では、複合問題のうち「物理・化学・生物」の科目で、構造式・化学反応・模式図などの視覚情報から考察し、解答を導く問題が多く出題され、30~40%台と低い正答率を示しました。

表3 第111回国家試験の科目別正答率

表3 第111回国家試験の科目別正答率

第112回に向けた科目別対策

 第111回でも平均点が低く、苦手とする受験生が多い「物・化・生」については、次のポイントを踏まえて勉強してください。また、150問出題される実践問題は得点源です。すべての科目を関連づけながら複合問題を解いていきましょう。

 第112回に向けて、どのような学修をすると効率的に学べるのか、科目別にポイントを紹介します。国試の既出問題は、最低過去5年分から7年分は解いてください。最近の国試の傾向を踏まえて、丸暗記ではなく、周辺知識も確認しながら学修を進めましょう。また、実務実習での臨床体験を各科目につなげて学ぶことも重要です。

 物理:既出問題で正答率の高い計算問題は早い段階で修得しましょう。代表的なセンサー、ドライケミストリーなど分析技術を臨床応用したもの、放射性医薬品、画像診断技術と画像診断薬は実践での出題が予想されます。既出問題の周辺知識を確認しながら、図を読み取る力を養いましょう。

 化学:化合物の構造および名称、立体化学、酸・塩基など基礎化学や基本的な有機反応の修得から始めましょう。構造式が関与する問題は多く、他科目でも出題されます。構造式から化学的特徴や性質を読み解いたり、症例問題の中で医薬品の構造式を関連づけたりできるよう応用力も身に付けましょう。医薬品や生体成分の化学的相互作用は実践で問われやすい範囲です。

 生物:疾患に関連する部位を図で問う問題、模式図・実験結果から情報を読み解く必要のある問題が多く出題されています。既出問題や模擬試験を活用して必要なキーワードを読み取る力を養いましょう。特に、核酸代謝、ビタミン、脂質代謝、ウイルス、解剖・生理(皮膚・血液など)では、疾患とつなげた学修を意識しましょう。

 衛生:幅広い範囲から基本的な事項や公式レベルの計算問題が出題されています。苦手範囲を作らないように学修しましょう。また、グラフ、表、構造式などを用いた思考力を問う問題が出題されています。既出問題や模擬試験を活用して思考力を養いましょう。特に、薬剤師に積極的な関与が求められている事項として、予防医療、薬物乱用防止などがあり、予防接種、薬物乱用、中毒時の解毒薬は、実践での出題が予想されます。

 薬理:出題基準に沿って満遍なく出題されているため、偏りのない学修を心がけましょう。理論・実践対策としては、実務実習中に扱った臨床上重要な薬物の作用機序・薬理作用を中心に勉強しましょう。副作用のメカニズムを作用機序から理解することで、患者の状態に応じた適切な薬物治療を提案する個別最適化医療につなげられるようにしましょう。

 病態・薬物治療:単独の疾患だけでなく合併疾患や妊娠などの患者背景を考慮して、治療薬・代替薬を提案する問題が増加しています。血圧・脂質・血糖・尿酸・腎機能・肝機能・血球数などの代表的検査所見は異常を判断できるようにしましょう。また、遺伝子検査の結果を基に個別最適化された医薬品を選択できることも重要になります。

 薬剤:グラフ、図、計算が多数出題されているため、読解力、計算力を身に付けましょう。実践対策として、薬物動態学では、遺伝子多型、代謝誘導・代謝阻害、排泄過程での薬物相互作用、TDM、投与計画について、製剤学では、製剤添加物、経口投与型DDS製剤、リポソーム製剤、リピッドマイクロスフェア製剤について、実務実習で体験したことをつなげながら学修しましょう。

 法規・制度・倫理:薬剤師として必要な法規・制度の基本事項が繰り返し出題されています。OTC薬、地域包括ケアシステム、後発医薬品の使用促進、ポリファーマシー対策など薬剤師が関わる国の施策については最新情報も踏まえて学修しましょう。すべての範囲で実践としての出題があり得るため、臨床を意識した学修が大切です。

 実務:他科目(薬理、薬剤、治療など)で学ぶ内容が、実務としても出題されています。また、与えられた患者情報(既往歴、検査値、症状など)が問題を解くヒントとなることが多いため、既出問題を用いた学修を行う際には、問題文から必要な情報を読み取る練習をしましょう。抗悪性腫瘍薬を中心とした代表的な副作用の症状とその対策、キレート形成やCYPによる薬物相互作用、点眼剤、坐剤、貼付剤、吸入剤、自己注射剤を適正に使用するための服薬指導、抗菌薬の適正使用などが、複合問題における実務範囲で出題されることが予想されます。これらの出題に対応するためには、科目横断的な学修が必要です。

 薬学ゼミナールの薬学生のための情報サイト「Capsule」にて、国試の問題解説を無料で視聴できます。国試の学修に役立ててください。



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