現在の医療は、西洋科学的な知見に基づいた治療体系となっています。このような治療体系は標準治療と呼ばれ、標準治療以外の療法は補完代替医療として区別することが一般的です。西洋医学が標準治療の地位を確立している所以は、治療効果の再現性にあります。ランダム化比較試験(RCT)によって治療効果が検証されている標準治療は、どのような患者であっても、一定の効果量を期待することができます。
一方、補完代替医療は、RCTによる効果検証がなされていないか、RCTが実施されていたとしても、プラセボを上回るほどの効果が示されることは稀です。日本で使用される頻度の高い漢方薬であっても、質の高いRCTは限られています(PMID:21687585)。その意味では、漢方薬に期待される効果の再現性は低く、その多くが文脈依存的な効果なのかもしれません。
とはいえ、漢方薬を服用することで、悩まされていた症状が緩和し、生活の質も大きく向上するケースは存在します。プラセボとの差が示されていないとしても、漢方薬を服用することで生活が豊かになる人は、決して少なくないのです。
RCTで示される治療の効果は、平均的な患者集団における平均的な効果量です。一方の漢方薬は、患者の心身の状態を的確に把握し、いわゆる証に合致した人のみに使用しなければ、その有効性は期待できません。西洋医学的には同じ病名であっても、証が異なれば、異なった漢方薬が用いられます。つまり、漢方薬の効果量は、西洋医学的な病名が前提となっているRCTでは適切に検出できないとも言えましょう。
漢方薬の効果をRCTで検出できない理由は、効果修飾の観点からも理解できます。効果修飾とは、ある治療の効果量が、特定の変数の水準によって異なる現象です。証という変数が効果修飾因子として働く場合、西洋医学的な病名のみで被験者を組み入れるRCTでは、集団全体の平均効果はゼロに近くなる一方、証に合致した部分集団では顕著な効果が存在する可能性もあり得ます。つまり、証を厳密な意味で考慮できないRCTでは、漢方薬の効果を適切に検出することが困難なのです。
西洋医学における標準治療と、東洋医学における漢方治療では、薬剤効果を論じるための言語が異なるように思います。西洋医学と東洋医学、どちらの言語が、目の前にいる患者の治療に対して、より豊かな記述を与えることができるだろうか? その問いを手放さないことが、漢方薬の効果を語る上で重要な視点であるように思います。
























