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民主公約、国民への説明が必須

2009年09月04日 (金)

 衆議院議員総選挙を舞台とした政界の悲喜劇が終演した。事前の風評通り民主党が圧勝し、政党政治に君臨し続けてきた自民党を、初めて第一党から引きずり下ろす結果となった。しかも、絶対安定多数を確保したため、参議院は別とし、予算という国家運営の最重要法案を、民主一党で成立させることも可能になった。

 ここで改めて、政権政党になった民主党の公約を見てみる。一般的には、高速道路の原則無料化や子ども1人当たり年間31万円超の手当支給など、大盤振る舞いが関心を集めているが、医療に関する部分を抜粋して紹介する。

 まず制度としては、悪評紛々だった後期高齢者医療制度の廃止と、国民皆保険の堅持を挙げている。具体策としては、[1]後期高齢者医療制度・関連法を廃止し、廃止に伴う国民健康保険の負担増は国が支援する[2]被用者保険と国民健康保険を段階的に統合し、将来、地域保険として一元的運用を図る――ことにしている。

 また、医療崩壊の阻止と、国民に対する質の高い医療サービスの提供も、マニフェストに記載されている。▽自公政権が続けてきた社会保障費2200億円の削減方針を撤回し、医師・看護師・その他の医療従事者の増員に努める医療機関の診療報酬(入院)を増額する▽OECD平均の人口当たり医師数を目指し、医師養成数を1・5倍にする▽国立大学付属病院などを再建するため、病院運営交付金を従来水準へ回復する▽救急、産科、小児科、外科等の医療提供体制を再建するため、地域医療計画を抜本的に見直し、支援を行う▽妊婦、患者、医療者がともに安心して出産、治療に臨めるように、無過失補償制度を全分野に広げ、公的制度として設立する――を具体策として列挙している。

 しかし、医師数を1・5倍にすることの現実性や、実際の具体的作業の内容となると、鮮明に見えてこない点は否めない。

 一方、緊急対応が必要となっている新型インフルエンザや疾患別の対応にも言及している。新型インフルエンザに関しては、危機管理・情報共有体制を再構築すると共に、ガイドライン・関連法制を全面的に見直し、診療・相談・治療体制の拡充を図るほか、ワクチン接種体制も整備するという。

 また、▽乳癌や子宮頸癌の予防・検診を受けやすい体制を整備し癌検診受診率を引き上げる▽子宮頸癌に関するワクチンの任意接種の促進▽化学療法専門医・放射線治療専門医・病理医などの養成▽肝炎患者のインターフェロン治療の自己負担額上限を月額1万円にする▽治療のために休業・休職する患者の生活安定とインターフェロン以外の治療に対する支援にも取り組む――ことにしているが、急に個別疾患と治療法を選別していることや、特定の専門医が明記されていることには、若干の違和感を覚える。

 各項目には所要額なるものが示されているが、自民公明が指摘するように、財源捻出について曖昧な感があることに加え、この所要額の算定にも明確な根拠が見当たらない。今後、国民に対して説明が必要になってくるだろう。

 誤解を恐れずに言えば、国民が未来も安全に安心して、健やかに暮らせる国を実現できるのならば、政権が民主でも自民でも、どうでもいいことだ。その時々において、最良の政党を選択すればいいのである。

 まずは、期待も込めつつ、民主の公約実現のお手並み拝見といったところか。



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