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2009年その他の主なニュース

2009年12月25日 (金)

 いつもの年よりも、慌ただしく年の瀬を迎えた。政権交代に代表されるように、今年は転換点の年だったようだ。新販売制度のスタート、薬学教育6年制での長期実務実習の最終準備など、慌ただしさも一入だ。10大ニュース以外にも薬業界にとって、重要な話題が数多くあった。その中から、いくつかをピックアップし、今年1年を振り返ってみたい。

薬卸連、別所新体制がスタート‐流通改善へ最大限の努力

 日本医薬品卸業連合会の新会長に、別所芳樹氏が就任した。5月の総会で、4期8年会長を務めた松谷高顕氏の辞任を受け、選任された。別所新会長は松谷氏の路線を引き継ぎ、医療用医薬品の流通改善に対し最大限の努力をしたいと、強い姿勢を見せた。

 また、流通改善に当たっては、メーカー、医療機関・調剤薬局、行政の協力が不可欠とし、特に、行政に対しては早期妥結にインセンティブが働く新制度の導入を、メーカーに対しては販売量ではなく、働きに応じたマージン体系への移行を求めていく考えを示した。

 今年の流通改善の状況に関しては、総価取引は一定の成果が得られたが、医薬品の価値に見合った価格形成は道半ばとすると共に、医療機関や調剤薬局での価格交渉では、医薬品の価値を知っている薬剤師の関与に期待感を寄せている。

JACDS、新会長に寺西氏が就任‐勤務薬剤師会も発足

 今年10周年を迎えた日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の新会長に6月、寺西忠幸氏(キリン堂代表取締役会長兼社長)が就任した。寺西新会長は、10周年を新たな出発点と位置づけ、2015年に10兆円産業という目標に向けて努力していきたいとの姿勢を強調した。

 また9月には、「JACDS勤務薬剤師会」が正式に発足した。設置に関しては、6月の通常総会で決定していた。勤務薬剤師会は、加盟ドラッグストアに勤務する薬剤師を総合的にサポートし、勤務薬剤師の資質向上や薬剤師の地位向上を図る活動を通じ、ドラッグストアの発展に寄与することを目的にしている。

 日本薬剤師会と相対するものでも、政治的活動をするのでもなく、いわゆる委員会制とし、会費はとらない形で運営される。

第1類薬の販売が不振に‐プロジェクトチーム立ち上げ

 新販売制度を盛り込んだ改正薬事法が、6月に完全施行されたが、セルフメディケーションの要となる、第1類薬の販売が振るわないことが明らかとなった。

 これは、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が、新販売制度が始まってから約1カ月後に実施した会員調査で分ったもの。調査では、販売店舗数自体の減少、販売時間の減少、販売方法による機会損失などの要因から、第1類薬の売上が前年比で約3割ダウンしていた。

 さらに、厚生労働省の消費者モニターが、薬局などで覆面調査を行い、不適切な販売方法などを、自治体に情報提供し、販売体制の改善を促す施策をとる方針を示していることから、さらに第1類薬を扱う店舗の減少なども考えられる。

 そこでJACDSは、第1類薬販売活性化に向けた検討を行うため、プロジェクトチームを結成、関係業界などのヒアリングを行い、課題を把握し、今後の活動の方針を検討している。

薬局ヒヤリ・ハット収集事業、今年度からスタート

 日本医療機能評価機構は、今年度から「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」を開始した。

 事業は、2007年の医療法改正で、安全確保のための体制整備が薬局にも義務化されたことを受けたもの。薬局から報告されたヒヤリ・ハット事例等を収集、分析、提供することで、多くの薬局が医療安全対策に重要な情報を共有し、国民に向けても情報提供することで、医療安全対策の一層の推進を図ることを目的にしている。

 9月に、第1回集計結果(4~6月末)が公表された。全国で登録のあったのは906薬局だが、ヒヤリ・ハット事例を報告したのは、54薬局にとどまった。件数は175件だった。うち、調剤に関する項目が166件とほとんどを占めた。具体的には「数量間違え」や「規格・剤形の間違い」事例が目立った。また、事例解析の結果、確認を怠ったことがヒヤリ・ハット事例の最も大きな要因となっていた。

日薬、会館建設に向け始動‐さらなる飛躍目指す

 日本薬剤師会は、8月の通常総会で、会館建設に向けて大きく舵を切った。児玉孝会長が、6年制薬学教育による薬剤師が誕生することや、日薬が2013年に創立120周年を迎えることから、「さらなる飛躍を図るキッカケになる」と、8月の総会で設立を執行部提案した。反対意見などはあったが、可決された。

 10月には、児玉会長をはじめとした執行部幹部等により、日薬会館建設特別委員会が発足し、会館設立に向けた具体的な検討が開始された。 建設資金については、総額20億円程度を見込み、約11億円ある「会館設立積み立て資産・医薬分業積み立て資産」等のうち、5億円程度を取り崩し、土地取得をしていく。残る15億円は借り入れ、土地建物を担保として、現在の日本薬剤師連盟を含めた事務所賃貸料1億円程度を、20年払いで返済していく。

 なお、会館設立に関し、各都道府県薬剤師会に対しアンケートが行われ、建設が「必要」としたのは32薬剤師会あった。

調剤薬局医療費、5兆円突破‐分業率は60%が確実に

 2007年度国民医療費は、前年度と比べ3・0%増の34兆1360億円と、過去最高を記録した。診療報酬改定や大きな制度改正がなかったため、自然増に近い伸びとなった。調剤薬局分の医療費は前年度に比べ8・8%増加し、5兆円を突破、病院の入院外医療費に迫る水準となった。

 診療種類別では、一般診療医療費が25兆6418億円で全体の75・1%を占める。内訳は、入院が12兆6132億円、入院外が13兆0287億円となっている。薬局調剤分は5兆1222億円で、構成割合は前年度より0・8ポイント増加して、全体の15・0%に至った。

 また医薬分業率は、日本薬剤師会の08年度調査で、前年度を1・9ポイント上回り、59・1%と、60%にさらに近づき、09年度は60%を上回るものと予測されている。

新しい病院薬剤師業務、スキルミックス議論が本格化

 地域の医師不足・偏在、病院勤務医の就労環境悪化などを受け、厚生労働省はチーム医療におけるスキルミックス推進の方向を打ち出している。

 これを受け、日本病院薬剤師会は昨年11月、「新しい業務展開に向けた特別委員会」を設置し、薬剤師の専門性を発揮した上で、病院薬剤師の業務範囲の裾野を広げるための「新しい業務展開」について、議論を重ねてきた。

 7月には、先進的な病院薬剤師業務に取り組んでいる事例の、中間報告が発表された。処方薬の剤形変更や、患者の状態をモニターし、処方変更や中止・投与量の変更などを提案する業務が、3割で実施されていた。またフィジカルアセスメントを実施している病院では、新たな業務に積極的に取り組んでいることが明らかになった。

 また厚労省では、「チーム医療のあり方に関する検討委員会」を8月に立ち上げ、薬剤師をはじめとした医療関係者等からヒアリングを行い、幅広い視点からスキルミックスのあり方を検討している。

新治験5カ年計画を見直し

 治験・臨床研究のさらなる活性化を目指し、厚生労働省と文部科学省が2007年3月に策定した「新たな治験活性化5カ年計画」(新5カ年計画)の中間点を迎え、厚労省は、専門家による検討会を立ち上げ、計画の中間見直し作業を行い、今月中旬に計画後半に強化すべき取り組みを大筋でまとめた。1月に開く最終会合で、報告書を取りまとめる予定だ。

 新5カ年計画の重点的取り組み事項(アクションプラン)では、「コスト・スピード・質」の向上を柱の一つにしている。検討会は、強化すべき事項として、積極的に症例集積性を高める必要があるとの認識で一致。また、GCP省令に沿った必要最小限の手順を明確化し、業務を整理するなど、国際的な競争力を維持・強化すると共に、IRBや倫理委員会の共同化を検討課題に位置づけた。また、ネットワークで症例数を確保することや、コストを抑えるために、医療機関が実績に基づく支払い方法を採用し、治験依頼者がモニタリング業務を効率化する方向性を示した。

OTC類似医薬品の保険外し、関係団体が反対の合唱

 11月の民主党の来年度予算概算要求事業仕分けで、OTC類似医療用医薬品の保険外しの方針が出された。財務省が、医療費抑制のため、予算編成時に毎年のように提案しているものだ。

 中でも、医療用漢方薬の保険外しでは、日本東洋医学会など関係4団体がこれに反発。反対の著名活動などを行い、今月中旬には92万通にも及ぶ反対著名が集まった。これを受け関係4団体は、「国民医療で医療用漢方薬は必須というのが民意」とし、長妻昭厚生労働相に名簿を提出するなど、活発な活動を行った。

 さらに、医療用湿布薬に関しても、外用製剤協議会が高齢者の医療費負担増や、会員会社の地域雇用に悪影響を及ぼすなどを理由に、反対の要望書を厚生労働省に提出する動きを見せた。

 長妻厚労相も保険外しに異議を唱え、民主党をはじめとした政権与党3党も反対の意を示し、財務大臣や副総理に撤回の要望を行っている。

レセオンライン請求、「選択制」へ

 レセコンなどを導入している保険薬局のレセプト請求が、今年度から原則“オンライン請求”となった。ただ、日本医師会や日本薬剤師会など、反対する医療関係団体に配慮した政治決断によって、厚生労働省は4月下旬に、当面の間、従来通りの請求を可能にすることを決めた。

 また、政権交代後の鳩山新政権下でも、今年度第1次補正予算見直しの中で、レセプトオンライン化支援について、義務化の免除措置と併せ予算を見直すとし、長妻厚労相は「強引に義務化するのではなく、オンライン化実現の到達点は変わらないが、猶予を設け対応する」と説明。

 11月下旬には、オンライン請求は“選択制”となり、常勤する医師や薬剤師が高齢(65歳以上)など4条件を付け、免除するなどの改正省令が施行された。



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