大地震、大津波、そして原発事故という未曾有の大災害を同時にもたらした東日本大震災の発生から20日が経過した。時間と共に被害状況も徐々に判明、直接的な被害総額は政府の試算で、約16~25兆円となり、かつての阪神・淡路大震災の約10兆円を上回る規模になるようだ。 さらに人的被害も、警察庁のまとめ(3月30日午前10時発表)によると、死者・行方不明者を合わせて約2万7600人となり、約17万5000人が17都県の2000カ所以上の避難所での生活を余儀なくされている。こうした数値だけを見ても、今回の大震災の被害が、阪神淡路大震災以上に深刻な事態ということを痛感させられる。
東北、関東エリアで今も余震が続く中、多方面からの被災地に対する救援・支援活動が総力を挙げて行われている。発生直後の緊急を要する人命救助活動などの初期活動から、現在は、被災地の復興支援や被災者の生活支援といった活動に移行している段階にある。
こうした中、日本薬剤師会も4月以降の2カ月間で、延べ3000人規模のボランティアの派遣を想定した取り組みを進めている。既に現地調査した児玉孝日薬会長も、「東北の都市部では病院、薬局は機能しているが、被災した沿岸部からの避難者の処方せん応需で大変な状態にある」との状況を語る。
現地では、日本赤十字社、自衛隊、各自治体などから派遣された医療チームが、救護所の避難者の診察に当たっている。
しかし、慢性疾患患者に対して、同一疾患でも医師によって手持ちの医薬品の違いからか、異なる医薬品が投薬され、患者も戸惑いを示しているとの話も聞く。そうした場面では、薬剤師による患者への薬剤情報提供は大事な役割になるだろう。
一方で、通常の震災後の救援活動とは異なる状況も発生している。今回の大震災で、今も予断を許さないのが福島第1原発の事故の影響だ。度重なる原発からの噴煙による放射性物質の拡散を警戒し、政府は30日現在も原発から20km圏内からの避難、30km圏内の自主避難の指示を出している。
通常、原発周辺エリアでは、万一の事故に備え、放射性ヨウ素の体内摂取を防ぐために使用する安定ヨウ素剤(ヨウ化カリウム)が備蓄されている。有事には、国の指示で配布されるが、既に原発近隣の自治体では、住民に配布するなどの措置もとられるなど、混乱が起きている。
さらに、ネット上や携帯電話のチェーンメールなどで、安定ヨウ素剤の代わりに、ヨウ素を含む市販のうがい薬等が有効だとするデマも流れている。今回の薬剤師の被災地救援活動では、通常の調剤業務や医薬品の情報提供などの支援以外にも、エリアによっては、放射性物質に対する体内の影響や薬剤知識をフルに活用し、被災者への広報に努める必要もあるだろう。
大震災直後から報道などで「不眠不休」という言葉がよく使われていた。一刻を争う状況では、そうした活動もやむを得ないかもしれない。現段階においては、十分な体力を温存した上での救援活動を心がけてほしい。
また、大震災直後に張りつめていた被災者も、相当に疲労困憊しているに違いない。そうした被災者心情も踏まえた支援活動が行われるよう期待したい。