4年制課程に進んだ学生が薬剤師国家試験の受験資格を得るためには、2年間の修士課程修了後、医療薬学系科目や実務実習などの単位を履修する必要があるが、一部の私立大学で、所定の単位取得を1年間で済ませようとしていることに非難が集まっている。
4年制課程に進む学生が多い国公立大学などでは、実習中は単位取得ができないこと、所定の単位取得や、実習に先立って行う事前学習などを考慮すると、国試受験資格を得るためには、最速でも4+2+1 (不足単位取得、事前学習など)+1(実習)の8年は必要であることを申し合わせていた。
それだけに、「4+2+1」コースの問題は、全国薬科大学学長・学部長会議、医道審議会薬剤師分科会、新薬剤師養成問題懇談会(新6者懇)でも取り上げられ、教育関係者の最大の関心事となりつつある。
当事者の私大関係者を交えて激しい議論が行われた全国薬科大学学長・学部長会議では、多くの大学関係者が1年間で必要な単位の履修と実務実習の実施は「難しいだろう」との考えを示したのに対し、当事者の大学は「可能」と主張したという。ただ、互いに憶測の域を出ていないので、これでは議論が平行線をたどるのも無理はない。
新6者懇では、1年という短期間で所定の単位取得と実習をこなした学生の質を懸念する声が相次ぎ、連名で自粛を求める声明文を出すことになった。しかし、学生の質も蓋を開けてみなければ、はっきりしたことは分からないだけに、決め手を欠いたという印象を受けた。
修士課程の質が確保され、6年制課程に相当する教育内容も担保されているのかについては、第三者評価などによる検証が必要になるだろう。 一部の私大は、新4年制課程と6年制課程では、設置目的やアドミッション・ポリシー、履修科目などが異なるということを忘れてはいないだろうか。
新4年制は、研究者養成が主たる目的で、薬剤師国試の受験はあくまでも特例的な措置。新4年制課程に入学した学生に12年間の経過措置が設けられているのはそのためだ。仮に、この特例措置を逆手にとった行為だったとなれば、批判は免れまい。
また、4+2+1コースは、2年間の修士課程を除くと、実質5年間で国試の受験資格が得られてしまうため、教育年限延長の根幹を揺るがす問題に発展しかねないことも忘れてはならない。
いずれにしても、不利益を被るのは学生だ。事態が進行してしまっている以上、現実的には、次年度から徐々に方向修正していく方策が考えられるが、被害を最小限に抑える方策はあるのか。関係者は知恵を絞ってほしい。