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既存薬剤の疾患予防根拠確立を

2012年02月10日 (金)

 わが国は、日進月歩の医療の発展と世界に類を見ない医療制度に支えられ、世界一の長寿国となった。その一方で、急速な高齢化と共に、生活習慣病や認知症の罹患率が増加傾向にある。

 その結果、国の予算の4割以上を厚労省予算が占めるようになり、医療費は約4兆円、そのうち薬剤費は1兆円にも上る。今後も医療費の増加は避けられない状況下にあるが、当然のことながら無尽蔵には増やせない。

 では、適正な医療費抑制策としてどのような手立てが考えられるのか。従来からの疾病の早期発見・早期治療に加えて、予防医療にも着目する必要があるだろう。

 わが国の認知症患者は現在200万人を超え、2030年までに400万人を突破する見込みだ。このような現況の中、生活習慣病とアルツハイマー病の発症・予防に関する米国のNIH(国立衛生研究所)レポート2010が注目を集めている。
 同レポートでは、全世界での各種生活習慣病の25%を抑制すれば、糖尿病では20・3万人、中高年の高血圧症では40・0万人、中高年の肥満では16・7万人、うつ病では82・7万人のアルツハイマー病患者が減少できると算出している。

 これらの数字は、生活習慣病管理への前向きな取り組みが、予防医療の実現に必要不可欠なことを改めて証明しているといえる。

 また、予防医療の重要な手立てとして、高血圧症や脂質異常症を治療する既存の薬剤における他の疾患や老化予防のエビデンス確立も忘れてはならない。

 具体例の一つに、アンジオテンシンIIや酸化ストレスがある。血圧降下作用で注目されるアンジオテンシンIIは最近、骨粗鬆症促進やアルツハイマー病の発症にも関与していることが分かってきた。

 降圧剤のARBに関しては、骨粗鬆症やアルツハイマー病を予防するコホートスタディや大規模臨床試験が報告されている。さらには、一部のスタチンでは、アルツハイマー病を予防するコホート結果も出ている。

 加齢に伴い服用する薬剤も増えてくるが、疾患と老化に関する共通因子に基づいた薬剤を選択することで、薬剤数を増やさずに他の疾病の予防もできる。

 現在の健康保険制度では、予防は認められていないが、この方法であれば主疾患の治療と共に、他の疾患の発症も防げるというわけだ。

 日本人は、肥満になる前の状態で脂肪肝になり、糖尿病を発症するケースが少なくない。その脂肪肝の改善効果が期待できる薬剤として降圧薬の「ミカルディス」や「イルベタン」、インスリン抵抗性改善薬の「アクトス」、脂質異常症治療薬の「ゼチーア」「ビタミンE」が報告されている。

 これら薬剤による疾患予防エビデンスを早期に確立し、予防医療に役立ててほしい。



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