今月22、23日の2日間、大阪国際会議場などで開かれた第46回日本薬剤師会学術大会には全国から薬剤師1万5135人が参集。会期中は好天に恵まれたこともあり、当日登録者は3000人を超えるなど、過去最大の参加者を得て、盛会裡に終了した。
今学術大会は日薬創設120年という節目の大会でもあった。テーマには「薬剤師の新たな使命」が掲げられ、児玉孝日薬会長は式典あいさつの中で、薬剤師がこの120年というターニングポイントを機に「将来の国民、薬剤師のために、前進する時期だ」と強調した。
式典後の記者会見で、児玉会長は医薬分業の現状の質問に対し「120年を経て、医薬分業率は約65%を超えてきた。数字だけを見れば、強制分業でない中で、よくここまで来た」との感想を述べると共に、「中身について批判があるのは事実」と、自身が分業率0%時代から携わってきた中で、当初の考え方と齟齬が生じている部分もあるとの認識を示した。
1990年代から推進し続けてきた医薬分業は、数値的な意味では、医療の枠組みの中に組み込まれ、多くの国民が受け入れている状態にあるといえる。一方で、今年に入り、一部マスコミなどから、「処方箋通りに薬を袋に詰める調剤技術料を適正化すべき」であるとか、「医薬分業は時代のニーズに合わなくなっている」といった薬局業務に対する批判的な報道も行われるようになった。
これら報道は、薬局、薬剤師業務や医薬分業のメリット自体を度外視した形のものだろうが、今や国民に定着してきた医薬分業という医療システム自体を疑問視する向きがあることに対しては、薬局・薬剤師も危機感を持たなければならないだろう。
これまで、医薬分業を中心に取り組んできた時代から、昨今の薬局、薬剤師業務は大きく変化し、その中身も多岐にわたってきている。やはり、従来の薬局内で薬剤師だけで完結する業務に近い形で進められてきたのがこれまでの医薬分業であり、薬局薬剤師の姿だったのかもしれない。
今後迎える超高齢化社会の中で、副作用発現の有無の観察、早期発見、重篤化防止のためのバイタルサインチェックやフィジカルアセスメントの実施、TDMの測定、さらには、薬剤師が主体性を持って剤形や用法などの選択を医師へ提案するなど、医師と薬剤師の役割分担も進めていく必要があるだろう。
学術大会式典で来賓としてあいさつした大阪府医師会会長の伯井俊明氏は「薬剤師には医師やその他の医療職と同様に患者を中心としたチーム医療に貢献していただきたい」と期待の言葉を述べるなど、薬学、薬剤の専門家である薬剤師の職能は医師側にも理解を得られている。
今大会を契機に、薬剤師が新たな使命に向けてさらに一歩前進していくことを期待したい。