間もなく2014年も幕を閉じようとしているが、今年は薬業界の大きな契機となる出来事が相次いだ。
薬剤師を取り巻く環境の変化では、まず国が、15年度から薬局を在宅やセルフメディケーションに対応する「地域の健康情報拠点」として位置づけ、ファーストアクセスの場とする方針を打ち出したことに伴い、各都道府県に健康情報拠点協議会が設置されたのも特筆すべき事項だ。
臨床検査技師法改正に伴う検体測定室の届出制の導入も実施され、全国で検体検査室の届け出を行った薬局も多数に上る。
先日、日本医師会と日本薬剤師会が、薬局で血糖測定等の簡易検査を行う場合、地域医師会、かかりつけ医の理解と指導のもと、「検体測定室に関するガイドライン」を遵守して実施することに合意したのは記憶に新しい。
薬局が「健康ナビステーション」となるための環境は徐々に整いつつある。後は、この制度の中に、薬剤師がどのように魂を入れていくかが大きなポイントになる。
今年度の診療報酬改定で主治医機能評価として地域包括診療料(月1回・1500点)、いわゆる「主治医」制度の新設も見逃せない。同制度は、地域を一つの病院に見立ててさらなる在宅医療の推進を図るもので、保険薬局の薬剤師にも病院薬剤師のように医療チームの一員としての活躍が求められている。
薬剤師フィーが調剤から在宅へと大きくシフトしていく方向性は揺るがない。これから薬局・薬剤師が生き残るには、▽健康支援業務▽調剤業務▽地域活動▽在宅医療――の四つのアクセスをうまく回し、地域医療に貢献する揺るぎない基盤を築くことが不可欠となるだろう。
製薬産業に関しては、「日本再興戦略」の柱として、創薬・医療分野に関する重点分野を決定する「健康・医療戦略推進本部」と、各省別の研究開発関連予算と予算配分を一元的に管理する「日本医療研究開発機構」が創設された。
また、今年5月、安倍内閣の成長戦略の目玉である医療イノベーション拠点として、関西圏が国家戦略特区に指定されたのも大きな出来事だ。これに伴い、9月末には、医療分野で初めて区域計画が認定され、革新的医薬品・医療機器等の事業化推進のための環境整備が展開されている。
特区で実施する規制改革として、先進医療の審査の迅速化を図るため、保険外併用療養に関する特例に係る「特別事前相談」も実施されている。
健康・医療分野、再生医療、医薬品開発などに関する規制緩和が進められる中、iPS細胞をはじめとする関西地域に蓄積されたバイオ・医療機器分野の研究活動のポテンシャルが十二分に生かされる成果が期待されるところだ。
創薬に関する環境整備が進む傍ら、大型製品が次々と特許切れした2010年問題から脱しつつある製薬企業も見受けられる。抗癌剤など、アンメットメディカルニーズに応える新しい医薬品の上市も珍しくなくなり、医療従事者や患者から高い注目を浴びている。
薬業界に身を置く全ての人は、数年先に14年を振り返って「患者ニーズに応える医療体制作りの契機になった年」と言えるようにしてほしい。