「ゴールは社会での活躍」がコンセプト
薬剤師国家試験予備校のメディセレは、薬剤師の生涯教育にも力を入れている。資格取得後、薬剤師として社会でその役割を十分発揮できるように、時代に即応した実践的な内容を学べる勉強会を定期的に開き、資質向上を支援してきた。併せて、心理学と薬学を融合し、薬の知識を持った心理カウンセラーを養成する講座を設置。「社会の保健室」として薬局が機能してほしいと期待している。
同社は2007年の創業時から既に生涯教育の展開も視野に入れていた。「国試合格がゴールではなく、社会での活躍がゴールというのが創業当時からのコンセプト」と社長の児島惠美子氏は強調する。日本薬剤師研修センターの研修プロバイダーとして09年10月に認証を取得。「次世代の薬剤師を創る会」と題した勉強会の企画、運用を10年度から開始した。
14年度までの5年間で計14回開催。15年度は「心理教育講座ワーク」をテーマに、15回目を6月にメディセレスクール大阪校、16回目を7月に同東京校で開催したほか、17回目を同名古屋校で9月に開く予定。各回100人の受講者枠はほぼ全て埋まるほどの人気。遠方からの受講者も少なくない。受講者は、日本薬剤師研修センターが認定する2単位を取得できる。
毎回設定されたテーマに沿って約90分間、講師の講演を聴くことが勉強会の柱だ。栄養指導、患者吸入指導、スポーツファーマシスト、緩和ケア、プライマリケア、認知症治療など、時代に即応したテーマが選定されている。
さらに、医療経済や心理学をテーマとして繰り返し取り上げていることも特徴だ。これらは、薬剤師資格を持つ社長の児島氏が、今後の薬剤師に必要な資質として考えているもの。「薬剤師には経済的な感覚や経営のセンス、コミュニケーション能力が不足している。これらを身に付けてもらいたい」と語る。
勉強会には、薬局薬剤師や病院薬剤師など数人が演壇で発表する「一般口頭発表」の場も設けている。「薬剤師はインプットはよくするが、アウトプットは得意ではないし、その機会も少ない。どんな反応があるのか、不安に思っているから発表しづらいのもある。この勉強会では、どんなボールでも講師陣がいくらでもキャッチするので、そこから話が盛り上がる」と児島氏。15回目の勉強会では、ある薬局の取締役が、経済性を考慮した先発医薬品と後発医薬品の選択について経営者ならではの生々しい話題を提供し、会場は大いに沸いた。
この勉強会にも盛り込んでいる心理学の要素について、本格的に学びたい薬剤師を対象に「心理カウンセラー養成講座」を09年から開講している。薬の知識を持った心理カウンセラーの養成を目指した、心理学と薬学を融合した新しい講座だ。
初級、中級、医療心理の3コースがある。講義に加え、学んだ知識が身に付くようにロールプレイによる実技にも多くの時間を割く。試験合格者は、児島氏が08年に立ち上げたNPO法人「医療心理学協会」が認定する資格を取得可能だ。メディセレスクール大阪校と東京校で開講し、これまでに約100人が受講。約30人が認定を受けた。
「患者さんへの対応を学びたいとして受講する薬剤師が多い。心理カウンセリングはコミュニケーションを円滑にさせる方法。傾聴し、話を引き出すことを学んでもらう。患者さんと話すのが怖かったけれど、自信を持って話せるようになったとか、それまでは自分からの一方通行の情報提供だったが、患者さんの話をしっかり聞いた上で返せるようになった、という声を受講者から聞く」と児島氏は話す。
本体の予備校経営は順調だ。児島氏は神戸薬科大学を卒業後、国試に落ちた経験を糧に予備校講師としてキャリアを重ね創業した。大阪から始まったスクールの拠点は全国5カ所に拡大し、在籍生徒数は右肩上がりで増えている。各地からスクール開設の要望は強くあるが、「質が低下したら元も子もない」。講師の育成に力を注ぎつつ、拠点開設の声にマイペースで応えていく考えだ。
Medisere
次世代の薬剤師を創る会
http://www.yakuzaisi.org/