保険薬局の課題に即した内容で研修会
「質の高いコミュニティファーマシストの育成」を理念に掲げ、新人薬剤師研修や今後、薬局に必要とされる在宅医療分野の研修に力を入れている薬剤師あゆみの会(本部大阪市、狭間研至理事長)。2006年には薬剤師認定制度認証機構(CPC)から「薬剤師生涯研修認定制度」の研修プロバイダーとしての認証を受け、来年度には10年目を迎える。研修委員長を務める安田幸一氏(ぼうしや薬局)は、「薬剤師あゆみの会は、中小規模の薬局の集まりでもあり、現場で求められる内容に沿った研修を企画しているのが大きな特徴の一つ」と説明する。
同会は01年に設立。現在、中小規模の調剤薬局14社が加盟する。各企業共通の課題でもある新人や中堅薬剤師の能力育成に向け、共同で研修をスタートさせたのが設立の経緯でもある。その研修プログラム自体は、各企業の現場での課題を積み上げながら構築されたものだけに、より現場に近い、実践的な研修内容となっているのは言うまでもない。
現在、同会では、これからの「かかりつけ薬剤師」に必要な保険調剤、在宅医療、統合(補完)医療、OTCなど全ての薬剤師を対象とした各研修を企画。注力する新人薬剤師向け研修は2年間で合計3回のスケジュールで実施。初年度には毎年5月に3泊4日の合宿形式での研修会を開催。地域医療の現場における調剤業務、在宅医療、OTCを活用したセルフメディケーションの推進などの研修プログラムを設定。日々のルーチン業務ではなく、医療の最前線での業務という意識改革を主眼とした内容を中心に取り組んでいる。
東京、大阪で開催する在宅実践オープンセミナーは、在宅医療の最前線で活躍する講師を招聘しシンポジウムの開催や在宅医療の実践事例などの報告発表を行う。また、在宅医療を展開していない薬剤師向けの在宅実践研修会では、聴診器の使い方などバイタルサインのチェックができる講習会も実施するなど、充実した内容を揃えている。
研修企画の方向性について安田氏は「地域包括ケアシステムで、薬剤師のメイン業務となり得る在宅医療関連研修の充実、さらには、セルフメディケーション時代に向けたOTCの取り扱いなどに注力したい」と語る。今後、これから求められる薬剤師の働きや新しい考え方、どのような視点で臨むべきかを考え「教える研修」から、「一緒に考えていく研修」という要素を取り入れていく意向である。
そうした中で、ここ数年、大学病院を中心に臨床検査値を表示した処方箋が発行されるようになってきた。現在は大学病院など限定的ではあるが、今後、検査値表示の処方箋が一般病院や診療所からも出てくることを想定し、『検査値を服薬指導にどのように生かすべきか』という課題が、現場から寄せられた。こうした現状を踏まえ、10月に開催する在宅実践セミナーでは、検査値を活用した服薬指導、在宅医療での取り組み提案などを研修として企画。「処方箋を発行している病院薬剤部から講師を招き、保険薬局で検査値をどう活用すべきかということを、処方箋応需し、取り組んでいる薬局の実例も紹介してもらう予定」だという。
昨年からは、OTCセミナーも開催。地域包括ケアシステムにおけるセルフメディケーション支援の意義とOTCマーケティング手法理論を知った上で、モデルケースを用いて販売計画、販売方法、結果検証からPOP作成までのグループワークを行う。さらに、管理薬剤師や店長クラスの管理者研修も実施。マネジメントスキルが店舗運営にどのように影響を及ぼすかを学習するものだ。「マネジメントが崩れると、薬剤師の定着率が悪くなり、結果として、薬剤師の質も向上しない。その意味ではマネジメントの知識も重要な要素」と語る。
このように、同会では加盟企業の保険薬局の現場で必要とされるエッセンスを抽出し、その情報を会員企業同士で共有しながら、業界全体に発信すべきものを研修化している。安田氏は、「教える研修ではなく、全体でソリューションしていく研修プログラムを設定していくことが、あゆみの会としての一番の特徴になる」と展望する。
一般社団法人 薬剤師あゆみの会
http://www.ph-ayumi.org/