日本医薬品卸売業連合会の大衆薬卸協議会はこのほど、「セルフケア卸将来ビジョン」を公表した。今年3月に開催された2016年度セルフケア卸セミナーで報告されたものと内容は同じだが、各項目ごとに分かりやすい文書で解説が加えられている。
大衆薬卸協の松井秀夫会長は、市場環境の激変に対応し、「健康寿命延伸産業」の中核として国民の健康と市場発展に貢献すべく、卸の果たす役割を検討して12年ぶりに新ビジョンがまとめられたことを説明すると共に、ビジョン巻頭言では、「この将来ビジョンは健康寿命延伸市場を創出するための幕開けとなるものです」と宣言した。
改めて将来ビジョンを見てみよう。まずは名称について。大衆薬卸と標榜しているが、今では会員の一般用医薬品売上構成比は4分の1に過ぎず、日用品雑貨・化粧品が約半数を占め、健康食品も15%以上と、セルフケア関連商品が主力になってきた。この現状から、大衆薬卸協は自らをセルフケア卸と名乗り、健康寿命延伸をキーワードにセルフメディケーション、健康生活支援、介護の領域をカバーして市場拡大と新たな市場創出に貢献することを基本に据えた。
セルフケア卸は、各社によって日用品雑貨・化粧品、一般用医薬品など主力製品カテゴリーが異なっていることが特徴であり、見方によっては公的制度に縛られている医療用医薬品卸よりもフレキシブルに、既存市場拡大や新市場創出に貢献できる可能性を秘めているとも言える。
新ビジョンでは、第1章で市場環境の変化を解説し、▽セルフケア卸の指針:健康寿命延伸産業として「セルフメディケーション」「健康生活支援」「介護」領域の市場拡大と新市場の創出、▽卸機能の向上:個々の卸が持つ機能の発揮により発展し続ける中間流通業を目指す、▽流通の最適化:製配販の連携により流通のムリ・ムダ・ムラの削減を目指す――の3章構成で、セルフケア卸が取り組む課題について触れている。
指針では「健康に関わる新しい商品とサービスを提案し、健康生活に寄与することがセルフケア卸の使命」と明記し、卸機能の向上では「卸の機能を存分に発揮することで、製配販全ての業態が成長・発展できるよう役割を果たす」と意気込みを示し、また、流通の最適化では「サプライチェーンマネジメントの観点から、製造、在庫、庫内作業、出荷、配送、店舗消化までの全ての面で最適化を図る」と卸としての役割を強調した。
今回まとめられた将来ビジョンは、変化に対応できなければ生き残っていけないという自然界・市場環境の大原則を明確に示したものと言えよう。ビジョンで提示された課題に的確・迅速に取り組み、市場の拡大と新市場の創出、何よりも国民の健康に貢献して、「セルフケア卸」としての存在感を大いに示してもらいたい。