昨年10月から届け出が開始された「健康サポート薬局」制度。8月末には全国で479軒という状況が示されており、現時点では既に500件は超えていると思われるが、その比率は総薬局数の100分の1以下の数にとどまる。開始から1年以上が経過した時点での届け出数としては決して多いとはいえないだろう。
言うまでもないが、健康サポート薬局は、2025年までに全ての薬局が備えることとされているかかりつけ薬剤師・薬局の基本的な機能を有し、これにプラス地域住民による主体的な健康の維持・増進を積極的に支援する薬局と位置づけられている。当然ながら、その届け出に必要な要件として研修の受講や、薬局機能の体制整備などが必要になる。そのハードルは決して低くないことが届け出数に反映されているのだろう。
先日開かれた日本薬剤師会学術大会のある分科会で、COML理事長の山口育子氏が、薬局薬剤師について「少数の頑張っている薬局と、多くの調剤偏重の薬局に2極化していると思う」との印象を語っていた。2極化により「たまたま意識の高い薬局に出会えると患者の(薬局薬剤師に対する)満足度が高まるが、がっかりする薬局だと薬剤師への期待を高めるのが非常に難しい」と山口氏は指摘する。
意識の高い薬局イコール健康サポート薬局だと短絡的に言うつもりはない。しかし、薬局薬剤師がなんらかの自助努力を行った結果として、患者満足度を高める機能を果たせるとすれば、その薬局は地域生活者から大きく評価されるべきだろう。
一方、健康保険組合連合会が先月発表した国民意識調査では、「薬局の利用状況」について「受診した医療機関の近くにある薬局で薬を受け取る」、さらに「かかりつけ薬剤師の仕組みを知らない」とする回答がそれぞれ6割以上を占めた。国が推進する医薬分業や薬局薬剤師機能の本来の目的がまだまだ国民に浸透していないことを物語る。
ここはやはり、国(厚生労働省)が理想として掲げる薬局イメージである「健康サポート薬局」についても、その存在、その機能について、一般国民に広く周知していく必要があるのではないか。現状、健康サポート薬局は、薬局許認可権限のある自治体への届け出を行い、同時に薬局自らが、薬局機能情報提供制度に基づき都道府県知事に報告することで一般に周知していることと見なされている。ただ、ネット上で情報公開した程度で「見える化」したことにはならないだろう。
今のところ、たまたま行った薬局が「健康サポート薬局」である確率はまだ低いレベルにあることには違いない。今後、診療報酬上のインセンティブに頼ることなく増やしていくためには、国などが健康サポート薬局の機能について積極的にアピールすることで、患者サイドが能動的に薬局を選択できるような仕掛けも必要ではないだろうか。