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第4次産業革命にどう向き合うか

2018年03月23日 (金)

 人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)、ビッグデータ、ロボットを活用する「第4次産業革命」が薬業界にも押し寄せている。薬剤師業務については、薬局の調剤業務や薬歴管理業務等の機械化が急速に進んだ。今では研究段階にあるものの、慶應義塾大学などがAIを活用して薬剤師の服薬指導を支援する薬学的推論システムの開発を始めている。

 既に病院では、調剤ロボット、注射薬自動払出装置、抗癌剤調製ロボットなどの導入が進んでおり、機械化が先行してきたと言えるだろう。一部の病院薬剤部は、さながら大きな調剤センターといった雰囲気である。

 こうした技術革新は、薬局や病院において、いずれも薬剤師の業務負担の軽減と患者の安全性向上に直結する。今後、ヒューマンエラー防止の観点からも、電子化、機械化の流れが加速することは避けられない。

 最近では、薬学生の就職までAIが支援する動きが出てきた。星薬科大学などは、AIを活用して薬学生の学生生活や就職活動を総合的に支援するポータルサイトを開始する。AIが学生の学修結果や学生生活での経験などを統合的に管理し、適性分析から学生の就職先に適した企業を探し出し、紹介するという仕組みである。もはや学生が薬剤師として就職し、実際に仕事をする一連のフローにAIが関わってくる時代になった。

 さらに、IoTを活用した服薬支援機器や患者の行動変容を促すシステム開発など、第4次産業革命は薬剤師業務に深く入り込んできている。一時、薬剤師業務の効率化の観点からテクニシャンの議論が活発化したが、日進月歩の技術革新がこうした議論を飲み込み、一気にAIや機械、ロボット等が主役に躍り出る可能性が高まってきている。

 製薬企業でも、上流ではAI創薬の可能性が世界的に議論され、国内製薬企業が参加するコンソーシアムの結成など盛り上がりを見せるほか、錠剤にセンサーを内蔵して服薬管理するデジタルメディスンという新たな概念も登場するなど、第4次産業革命は花盛りの状況だ。

 問題は、急速に発展するAI、IoT、ロボットといった技術革新にどう向き合っていくかだ。企業レベルでは、実際にヘルスケア産業との融合が進んでおり、創薬育薬というテリトリーから健康管理の領域まで広がりを見せつつある。それに対応する製薬企業側もデジタルヘルスへの取り組みを急ピッチで進めているところで、少しでも先行を目指す激しい市場獲得合戦がグローバルで繰り広げられている。

 一方、薬剤師業務の領域はどうか。対人業務へのシフトが叫ばれる中、目先の制度や業務に目を奪われることなく、機械ができる部分は任せて時代を理解することが業務のイノベーションにつながると発想を転換したい。その対応はもはや待ったなしだ。



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