近年、インターネットなどを介して世界中で模造、違法医薬品の大量取引が行われているようだ。WHOの調査によるとその市場規模は750億ドル(約8兆円)に及ぶなど、日本の医療用医薬品市場に相当する規模であり、健康被害など保健衛生上の重要な問題として看過できない状況になりつつある。
こうした状況に対応するため、国際刑事警察機構(ICPO)主導のもと、2008年から世界各国の捜査機関が協力、参加してインターネット上での違法な医薬品や模造薬品の広告・販売を集中的に取り締まる国際的キャンペーン「オペレーション・パンゲア」が実施されている。
日本は11年から参加。今回で11回目となる「オペレーション・パンゲア」にはICPOと世界税関機構の呼びかけにより、今月9~16日の8日間にかけて行われ、日本を含む61カ国・地域が参加した。
警視庁がこのほど公表した今回の実施状況(速報値)によると、参加国・地域全体で捜査事件数838事件、検挙被疑者数859人、押収量約1000万点、削除サイト数3671件だったようだ。
昨年のキャンペーンは8月19日~9月19日の1カ月間実施され、捜査事件数は約1000事件(国内14事件)、検挙被疑者数約350人(国内15人)、押収量約2500万点(国内1万8426点)で、時期やキャンペーンの期間は異なるものの数値自体は減少しておらず、依然、深刻な状況にあると言える。
国内の捜査では、サイバーパトロールでインターネット上の広告違反を把握することからスタート。医薬品違法販売事案の形態は、[1]医薬品の成分を有しているものの厚生労働省の承認を得ていない模造医薬品を販売する事犯[2]単なる健康食品を癌や糖尿病、高血圧が改善される――等の根拠のない効能・効果を宣伝して販売する事犯に大別されるという。
また、昨年の「オペレーション・パンゲア」によって、日本で押収された医薬品約1万8000点のうち、国内で承認を得ていないED治療薬や外用早漏防止薬などが全体の45%と半数近くを占め、麻酔剤が約9%、残りは育毛剤、糖尿病治療薬、認知症治療薬などが多かったようだ。
国内では昨年1月にC型肝炎治療薬ハーボニー配合錠の偽造品が卸売販売業者を通じ、国内に流通、薬局において調剤され患者に渡るという衝撃的な事案が発生したことは記憶に新しい。幸い服用した患者への健康被害は発生しなかった。
だが、グローバルでは偽ワクチンで2500人が死亡したり、偽の咳止めシロップで200人の子供が死亡するなどの痛ましい事例も発生している。
偽造医薬品が流通することは、健康被害の問題にも直結するだけに、不正流通が起きないよう歯止めをかけるのは、医薬品の製造・配送・販売に携わる者の責務だ。