平成最後の年の瀬も、残すところ後5日となった。今年を振り返ると、薬剤師にとっては「ターニングポイントとなる激動の年であった。「2018年度診療報酬改定」と「厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会の薬局機能の論議」が、薬剤師の存続を決める大きな契機になると言っても過言ではないからだ。
18年度診療報酬は、医科、歯科、調剤が技術料で平均に伸びたが、調剤が積極的に評価されたものではない。「地域包括ケアシステムの構築」と「質の高い医療の実現」を柱とした18年度診療報酬改定では、調剤に対して、「かかりつけ薬剤師の推進」「地域医療に貢献する薬局の評価」「薬局における対人業務の評価充実」「効率的で質の高い在宅薬剤管理指導業務推進」を求めている。
調剤が次回の診療報酬改定で評価されるためには、薬剤師・薬局がこれらの内容について定量的な面でどういったデータを出せるかを常に意識して、日常の業務に取り組む必要があるだろう。
一方、厚科審制度部会の薬局機能の論議では、「かかりつけ機能を持つ薬局と高度薬学管理型薬局、それ以外の薬局」に3分類する方向性が示唆された。
薬局機能の3分類は、専門知識を持つ薬剤師がいて初めて成り立つため、薬剤師のキャリアアップとセットで論議する必要がある。
日本薬剤師会が、薬局薬剤師のキャリアアップのための仕組み作りをしっかりと推進する中で、地域との整合性を持たせながら薬局機能分類を組み立てていくかが今後の焦点になるだろう。
いずれにしろ、これら薬局機能論議はともに、“患者のための薬局ビジョン”をいかに実現するかが大きなポイントになるのは間違いない。
翻って製薬企業部門は、一歩、一歩アンメットメディカルニーズに応えるべく成果を残しつつある。10月に本庶佑京都大学特別教授が「免疫抑制の阻害による癌治療法の発見」で、ノーベル医学・生理学賞を受賞したのは記憶に新しいところだ。
本庶氏の研究成果は、免疫チェックポイント阻害薬として実用化され、4年前に小野薬品が「オプジーボ」を上市した。
画期的な作用機序と一部患者に高い治療効果を示す免疫チェックポイント阻害薬は、癌領域での新市場をめぐって、小野薬品と米ブリストル・マイヤーズスクイブ、米メルクなどの5陣営で開発競争を展開し、癌患者に福音をもたらす原動力となっている。
加えて、エーザイの次世代アルツハイマー型認知症治療薬の開発動向も注目される。iPS細胞の医療応用は、他家移植の加齢黄斑変性治療5例が経過観察中にあり、パーキンソン病についても今年8月にスタート。iPS細胞を活用した癌免疫療法や大量の血小板産生方法の開発も順調に進んでいる。
11月末には、25年大阪万博開催決定の朗報が舞い込み国内が湧いた。健康長寿社会を目指す理念提唱型スタイルの大阪万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をメインテーマ、「多様で心身ともに健康な生き方」「持続可能な社会・経済システム」をサブテーマとしている。製薬企業は、これらテーマに最も関われる立場にあり、日本の高い創薬能力を世界に誇示する腕の見せろどころでもある。