特発性過眠症とは、十分に睡眠を取った後でも日中に過度の眠気を引き起こす、まれな睡眠障害である。米食品医薬品局(FDA)は8月12日、成人の特発性過眠症に対し、ナルコレプシー(過眠症の一種)の治療薬であるXywavの適応拡大を承認したことを発表した。Xywavの経口剤は、ナルコレプシー患者(7歳以上)の日中の過度の眠気と突然の筋力低下に対する治療薬として、既に承認されている。FDAによる特発性過眠症治療薬の承認は、同薬が初めてだという。
FDA医薬品評価研究センターのOffice of Neuroscienceで、副ディレクターを務めるEric Bastings氏は、「特発性過眠症は生涯にわたる症状である。Xywavが承認されたことにより、過度の眠気や起床困難などの症状を治療できるようになり、この衰弱性疾患を効果的に管理するのに役立つ」と述べている。
同薬は、19~75歳の成人患者154例を対象とした臨床試験の結果を基に承認された。FDAによると、同薬からプラセボに切り替えた患者は、服用を継続した患者と比較して、眠気と特発性過眠症の症状が悪化したという。同薬の服用による最も一般的な副作用として、吐き気(21.4%)、頭痛(16.2%)、めまい(11.7%)、不安(10.4%)、嘔吐(10.4%)が報告されている。
同薬は、けいれん発作、呼吸困難、覚醒度の変化、昏睡、死亡などの重篤な副作用を引き起こす可能性があるとして、中枢神経系の抑うつ、乱用、誤用についての枠組み警告が記されている。これらのリスクがあることから、同薬は、厳格な処方と調剤管理の対象とされている。すなわち、認定を受けた者のみが処方でき、認定を受けた薬局が同薬局に登録した患者のみに調剤を行っている。
一部の専門家は、新たな承認を裏付けるエビデンスは弱いと述べており、同薬の投薬の危険性に懸念を示している。即効性が非常に高いことから、添付文書では、使用者に対して就寝前と就寝後2.5~4時間の2回の服用を勧めているとタイムズ紙は伝えている。
米ラトガース・ニュージャージー医科大学の医療毒物学部長であるLewis Nelson氏は、「この薬には、薬物乱用と薬物依存の両方の観点から深刻な安全上の懸念がある」とタイムズ紙に語っている。(HealthDay News 2021年8月13日)
(参考情報)
Press Release
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-grants-first-its-kind-indication-chronic-sleep-disorder-treatment