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止まらぬ治験不正に歯止めを

2016年1月15日 (金)

 治験をめぐる不祥事が後を絶たない。SMOのエシックが受託した治験で同社のCRCが患者日誌を改ざんしていたことが発覚した。被験者が書くべき患者日誌の数値、時刻を7カ所書き換えるなどの不正を行ったもので、昨年7月に北里研究所病院バイオメディカルリサーチセンターで健常人ボランティアのナトリウム値を書き換えたデータ改ざん事件に続き再び不祥事が起こってしまった。

 SMO業界にとっては、大手のサイトサポート・インスティテュート(SSI)が被験者の身長データを改ざんした不正が社会を揺るがした反省から、業界団体の日本SMO協会が昨年6月、自主ガイドラインをまとめ、再発防止を誓って対応に乗り出した。その矢先の不正発覚だけに衝撃は大きい。

 幸いデータ改ざんによる健康被害は報告されていない。ただ、GCPで規制されている治験の基本的なルールを守らない事態が相次いでいることは問題だ。少しだけ身長を書き換えたり、ナトリウム値を上げたり、患者日誌を書き換えても大きな影響はないと考えてしまうモラルハザードが業界全体に広がっていることを危惧する。

 今回の患者日誌の一件でも「間違っていた数字を正しく直したり、医師が書いた読みにくい数字を書き換えたものであり、本来あるべき内容に修正されている」との釈明が聞かれた。その通りかもしれないが、悪意のない書き換えだから良しとするような考え方が社会に通用するとは思えない。

 相次ぐデータ不正事件をめぐっては、見えない圧力の問題も見え隠れする。北里の件で最終的に強制はなかったと結論づけられたものの、内部告発した臨床検査技師は、上司の指示を受け手入力でデータ改ざんを実行し、以前から基準値に入るよう再検査を繰り返す慣行に抵抗を感じていたと証言している。無言の圧力に耐えられず、やむなく告発したのが真相だろう。患者日誌の件でも、逸脱を恐れるモニターの圧力があったのではないかとの声もある。

 厚生労働省は、データ不正があった一連の申請資料の信頼性について、第三者調査の結果を待って対応を決めたいとし、事態を静観する構えだ。しかし、自主ガイドラインからわずか半年後の不正発覚で業界の自浄作用に疑問符が付いただけに、国は厳しい姿勢で臨むべきである。もし新薬の治験で不正が恒常化しているならば、むしろ事態はディオバン事件より深刻かもしれないからだ。

 新GCP施行から15年以上が経過し、日本の治験環境は大きく改善されたとの評価も出てきた。こうした努力の積み重ねを崩してしまいかねない危機的な事態にもかかわらず、まだ業界に危機感が足りないように写る。傷が深くなる前に、行政も含めた全体で業務内容やフローを見直し抜本的な改善を急がなければならない。




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