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【医薬・医療業界の人事戦略を探る】大日本住友製薬

2016年02月26日 (金)

製薬企業篇

4月に新人事制度スタート‐組織管理から個の突破力へ

小田切氏

小田切氏

 4月から新たな人事制度をスタートさせる大日本住友製薬。「組織型管理」から「社員の個」を生かす人事政策に舵を切り、癌領域や再生・細胞医薬に挑む。受動的に環境変化に合わせる人材から自ら道を切り拓いていく人材へ。執行役員人事部長兼キャリア開発担当の小田切斉氏に聞いた。

 ――求めるべき人材像は。

 過去は業界全体の市場が拡大する中で会社を成長させることができたが、今後は特定の事業分野で強みを発揮してトップを走っていかなければ生き残っていけない時代がやってきている。

 当社は、精神神経領域などの既存領域だけでなくiPS細胞由来の再生・細胞医薬の実用化にも挑戦しており、最先端の領域でトップランナーを走っている自負がある。その中では、従来型の指示、命令を中心に官僚的に人材を動かすのではなく、変化の波を自らつくっていける人材を輩出していくことが必要だ。組織の中でバランスを取っていく人材も必要だが、社員一人ひとりの突破力が成長のより大きな原動力になる。

 ――新人事制度を立ち上げた背景は。

 今年4月からスタートするプロフェッショナル人事制度は、2年前から検討してきた。当社は昨年合併10周年を迎えたが、大日本製薬と住友製薬の融合を促進する時期を経て、他社に比べても、雰囲気の良い社風を形成することができたと思う。反面、会社が決めた方針に基づいて、組織の枠組みの中で人材が動くという受身傾向が強く、社員の能力やアイデアを事業戦略に生かしていく人材活用が不足していた。

 数年前より、年功序列型から成果主義型の人事評価に改め、若手社員も積極的に登用し、チャレンジする文化を作り出してきたが、未だ、安易なマネジメント志向に偏った人がいることも否めない。

 各部署で組織をまとめるマネージャーとして昇進していく従来のキャリアパスの「プロフェッショナルマネージャー」(PM)職に加え、専門性に根ざした個としての成果創出能力が高い社員を配属する組織から外し、独立した存在としての「プロフェッショナルコントリビューター」(PC)職として登用することを決めた。新たな制度に改定することで、課長・部長クラスの幹部社員をはじめ、若手社員の意識改革を促していきたい。

 ――人事制度の概要は。

 新人事制度では現在の幹部社員を中心とした幅広い人材の中から、「PC1」「PC2」を約40人選抜した。PC職の権限を強化したり処遇を高めたり、組織の枠を超えた活躍が行いやすいように工夫をした。PC職の下にはPAを創設し、幹部社員の中で特にスキルが高い人材を将来のPC、PM候補者として抜てきしていく。

 PCの選抜基準は職種によって異なるが、会社の利益に貢献していけるかが判断の大きなポイントになっている。例えば、営業成績や研究成果が一つの目安であり、部門をまたいで周囲を巻き込みながら仕事ができるような人物を想定している。PCには自分を補助する役割として、アソシエイトの社員を指名できるようにし、より能力を発揮できるようにしていくつもりだ。仮に成果を生み出せずに失敗したとしても、挑戦的な姿勢で臨む人材に対しては、会社としてはより寛容であり、次の挑戦を促す必要があると考えている。

 ――採用・教育体制は。

 ここ数年中途採用は20人前後と安定している一方、新卒は2013年度の90人から今年4月入社が47人と減少している。再生医療や癌領域など新たな分野での事業展開に向け、専門性を持った人材、即戦力人材を積極採用している。

 若手社員への教育に向けては課題を感じており、今後4~5年で教育投資を積極化させたいと思っている。各部署から将来のPC候補となり得る若手人材を集め、「選抜研修」を行っていく。単に組織を管理するようなマネジメント能力を養成していくのではなく、豊かな発想や事業アイデアや実行力を醸成する研修を考えている。

 ――女性の活用は。

 女性に限らず、MRについては、地域選択制度を導入し、結婚時や育児に携わる時期には勤務地選択もできるようにした。首都圏や関西圏も含めた地域選択が可能で、現行の報酬も下げずに働きたい地域で仕事ができるのが特徴。優秀な成績を残した人材が働き方の問題で退職しないよう制度として整えた。6月には一部の職種を除き、在宅勤務制度の導入も予定している。

 ――今後の目標。

 「誠実」「真面目」という社風を大事にしながら、そこに社員一人ひとりの「強さ」を加えたい。会社の経営理念をベースに成長してきたが、突破力のある会社を目指していきたい。



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