いわき市の私立大学である医療創生大学は1月、2026年度から6年制薬学部薬学科の新入生募集を停止すると発表した。同大薬学部は、最近10年間で入学定員数を満たしたのは15年度のみ。24年度新入生の定員充足率も50%を割り込み、今後も改善する見通しが立たないことから決断したようだ。
昨年4月に、姫路獨協大学が25年度からの薬学部の募集停止を発表してからわずか1年以内の間に、2校目の募集停止が決まったことの意味は重い。本紙は昨年、薬学部の運営に苦慮する大学の決断を加速させる可能性もあると指摘したが、その通りの展開となった。姫路獨協大の決断が、募集停止への流れの口火を切ったと言えるかもしれない。
依然として定員充足率が5割を切る薬学部・薬科大学は24年度でも数校存在する。今回の医療創生大の決断背景を踏まえると、これら大学は既に危険水域に入っていると考えられ、いつ募集停止が決定されても不思議ではない。
昨年12月には、新潟薬科大学が新潟科学大学への名称変更と共に、薬学部の入学定員を30人削減することを発表した。募集停止まではいかなくても、薬学部の定員を縮小する動きも加速している。
一方、公立化の一条件として薬学部の廃止が求められていた千葉科学大学は1月、一転して薬学部を含む現行体制の私立大として運営を継続する基本方針を公表した。発表の名目は新学長の就任だったが、同大が立地する銚子市は「説明がなかった」とし、26年度以降の方針は白紙と強調している。薬学部の廃止には不透明感が漂うが、状況が改善したわけではない。
既に私立大学では、学部を再編成して医療系学部にシフトしたり、文系学部を取り込むような動きが活発化している。こうした大学をめぐる変革期に薬学部の人気が低下しているのは気になる。日本私立薬科大学協会の調査によると、最近10年間で志願者が増加したのは8年ぶりの回復となった22年度だけで、減少傾向が続く。既にピークアウトは鮮明で、薬学部の入学生確保も激しい競争に巻き込まれる時代に突入している。
この1年で薬学部の募集停止が相次ぎ、いよいよ淘汰の時代が本格化した。文部科学省は25年度から薬学部の新設や定員増を認めない方針を決めたが、現実を見れば遅きに失した感がある。今後、大きな視点で見れば、薬学教育の質を確保するためにも薬学部の淘汰は避けられないが、ここまで薬学部新設バブルを膨らませてしまい、対応が遅れた国の責任も大きい。
バブルの後始末は大きな痛みを伴うことになりそうだ。しかし、その痛みを学生に負わせることがあってはならない。何よりも大事なのは在学中の学生の将来である。大学関係者には、学生の人生を引き受けているという大きな責任があることを改めて確認してほしい。