第28回日本医療マネジメント学会学術総会が5月29、30の両日、愛知県名古屋市のポートメッセなごやで開かれ、29日には学会とジャミール商事の共催でランチョンセミナー「AIが拓く予防医療の未来―『見つける医療』から『防ぐ医療』へ―」が開催された。マンモグラフィ画像から乳がんリスクを予測する「MIRAI」や、低線量CT画像から肺がんリスクを予測する「SYBIL」を中心に、AIを活用した予測医療・予防医療の可能性、本邦導入の課題が議論された。
セミナーは、座長に中央大学大学院戦略経営科教授・多摩大学大学院MBA特任教授の真野俊樹氏、演者に四谷メディカルキューブ乳腺外科部長の林光博氏、米国MITジャミールクリニックのナセル・マミ氏、国立がん研究センター中央病院腫瘍内科の齋藤亜由美氏を招いて行われた。
真野俊樹氏は、日本の医療は国民皆保険制度のもとで高度な医療にアクセスしやすい一方、予防医療は健診や人間ドックによる早期発見、生活習慣病対策が中心で、受け身の側面があると指摘した。その上で、AIやITを活用して一人ひとりの将来リスクを把握し、発症前から対応する「予測して防ぐ医療」への転換が重要になると問題提起した。
林光博氏は、医療現場では画像診断支援や業務効率化などでAI活用が進みつつあると説明した。一方で、現行の乳がん検診・診療では、既存の臨床的リスク因子だけでは高リスク者を十分に特定できないとし、AIによるリスク予測によって、これまで高リスクと認識されていなかった女性を把握し、個別化検診や予防戦略につなげられる可能性を示した。
ナセル・マミ氏は、当施設でAIを医療に活用する研究開発を進めていると紹介し、MIRAIとSYBILは、医療画像から将来のがん発症リスクを予測するモデルだと説明した。高リスク患者の早期特定やリスクに応じた個別化検診、早期介入を支援するもので、海外では健康アウトカムの改善や医療の効率化、診断の迅速化の可能性も示されているとした。また、AIの価値はアルゴリズム自体ではなく、臨床知見や現場運用、医療機関との連携を通じて、発症後に対応する医療から、予測的・予防的・個別化されたがん医療への転換を支援する点にあると述べた。
齋藤亜由美氏は、国立がん研究センター中央病院と四谷メディカルキューブで、MIRAIの本邦における予測精度を評価する国内共同検証研究MIRAI-Japanを2025年末から開始したと報告。日本人では体格や高濃度乳房の頻度など、欧米と異なる背景があるため、日本人データに基づく外的妥当性の確認が重要と説明した。その上で、MIRAIにより乳がん発症リスクの可視化や個別化検診、医療資源配分の最適化が期待される一方、規制、運用、倫理、経済性などの課題整理が必要との認識を示した。
パネル討論では、日本でもデータベース整備やゲノム医療の進展に伴い、予防医療を進める環境が整いつつあるとの認識が共有された。ナセル・マミ氏は、今後の論点は「AIを使うべきか」ではなく、「AIをどう正しく活用し、医療システムに統合するか」にあると指摘した。真野俊樹氏は、同様のリスク予測研究が進んでおり、今後、実装に向かう可能性があるとの見方を示した。
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