日本薬学生連盟広報部
日本薬学生連盟広報部は、2024年度に日本薬剤師会理事に最年少で抜擢され、今後の医療に関する提言や啓発活動に取り組んでいる同連盟OBである、薬剤師の日髙玲於さん(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室HTA公的分析研究室)にお話を伺いました。谷川優人(明治薬科大学薬学部3年生)、庄司春菜(東京薬科大学薬学部4年生)が聞き手となり、薬剤師を取り巻く環境の変化や、今後求められる役割についてお話しいただきました。皆さんの新たな知見を広げるきっかけになれば幸いです(執筆:谷川優人)
学生時代から職能拡大に関心
――はじめに、日髙さんが日本薬剤師会の理事になったきっかけをお教えいただけますか。
きっかけは、日本薬剤師会の岩月進会長からお声がけをいただいたことです。常務理事や理事は、会長の指名で選ばれます。岩月会長が、将来を見据えて積極的に関わる人に理事になってもらいたいと考えていたこともあり、ご指名いただきました。薬学生時代から、薬剤師の職能拡大に強い関心を持っていたことも背景にあります。
薬学生時代に母親を看取った経験もありましたし、そこから医療人として薬剤師はどうしていくのかということにも、ずっと関心を抱いていました。その経験を基に北里大学薬学部卒業後は、薬局薬剤師として在宅医療の現場に関わりました。
その活動の中で、薬剤師がこんなに患者さんやご家族に貢献しているのに、どうして薬剤師に対する評価や点数はこの程度なのだろうとすごく疑問に思っていました。そこで医療経済学を学ぶために、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科に進み、立場が変わった今でも一貫して薬剤師の職能を広げたいと思って活動してきました。そのような自分自身の志も踏まえて、岩月会長が声をかけてくださったのだと思います。
――どうして薬剤師の職能を広げたいと思っているのですか。
私が日本薬学生連盟の活動に参加した時に、海外の薬学生と話す中で、日本と海外では薬局や薬剤師が取り組めることには大きな違いがあると知りました。そこから、もっと日本の薬剤師もできることがあるのではないかと思うようになりました。例えば、私が興味を持った終末期医療において、もっと薬剤師が患者さんのベッドサイドに行けるのではないか、多職種で協力しながら進められるのではないかと思います。
――今後、対物業務よりも対人業務の方に重点が置かれるようになると思いますが、薬剤師に求められる価値としてこれから何が重要になっていくと考えていますか。
最初に、前提としてお伝えしたいのが、対物から対人へという言葉の意味は、対物業務より対人業務を優先して行うという意味ではないということです。患者さんの薬物治療を担う上で、正確で安全な対物業務を提供することが、薬剤師の最も重要な業務であることに変わりはありません。
その前提の上で質問に答えると、2026年3月の日本薬学会年会で新しい調剤の概念が発表されました。調剤の概念とは、「薬剤師が医薬品情報と患者情報を用いて薬学的観点から処方の意図を評価し、必要に応じて照会・提案を行った上で、処方に基づき患者に対して個別最適化された薬物療法を提供する一連の行為である。このプロセスは継続的に行われるものである」と再定義されました。薬剤師が患者の生活情報や価値観を聞き、なぜその薬が処方されたのかを踏まえた上で個別最適化する薬剤レビューに積極的に取り組むことが、求められる価値になると思います。
地域で働く魅力伝える仕組みを
――問題になっている薬剤師の地域偏在に対しては、今後どのような対策の方向性になるでしょうか。
今の地域偏在の状況を見ると、長期的な視点を含めた対応が必要だと思っています。薬局も薬剤師不足の問題を抱えていますが、特に病院薬剤師の不足が課題だと認識しています。この課題に対して国は、2036年までに薬剤師偏在是正を達成することを長期的な目標として薬剤師確保計画ガイドラインを作成しており、行政全体で確保に向けて取り組みを進めています。
同時に、各地で地域医療介護総合確保基金を活用して薬剤師を確保する取り組みも動いています。例えば北海道ではこの基金を使った薬剤師の派遣登録事業が始まっており、登録者を北海道内の薬局に送っています。佐賀県では、佐賀県薬剤師会が主体になって薬剤師の奨学金制度を作っています。
離島や僻地など医療資源が少ない地域においても、薬剤師や薬局による医療提供機能を確保、維持していかなければなりません。地域で働く魅力を多くの薬学生に伝えていく仕組みを、民間の努力だけではなく、行政も含めて整えることが大事だと思います。
――必要とされる薬剤師となるために、どのような学びが求められますか。
薬学教育という観点でまず着目すべきことは、モデル・コア・カリキュラムがどうなっているのかです。令和4年度改訂版では、小児から高齢者までの生活環境を踏まえた薬物治療を意識することや、多職種連携の重要性が明記されています。また、学習の達成度の評価も、以前のモデル・コア・カリキュラムでは単に「できた・できない」をチェックする形式でしたが、近年は段階的に評価する「ルーブリック評価」へ移行しています。薬学教育の中では、薬剤師に必要な対応力は段階を追って育んでいくものだと位置付けられています。
また、大切な資質として、患者さん1人ひとりの生活に寄り添い、生活の中での困り事を相談してもらえる薬剤師になることが重要だと思います。患者さんは薬剤師という資格を見ているのではなく、人柄や人間性を見ています。学生の時から、周りの友人や先輩後輩の関係性の中で、あなただからお願いするのですと言われる人になりましょう。
もう一つは、PDCAサイクルをちゃんと回して取り組めるかどうかです。薬剤師として働く中で、目標を設定し、実践して、何が足りなかったのかを評価して、改善につなげることはすごく大事です。薬剤師の仕事は忙しく、まとまった時間を取って学び直したり、勉強したりする時間はなかなか取れません。そのため、日々の仕事の中で小さいことからちゃんとPDCAサイクルを回して、自ら学び続ける姿勢がとても大切です。























