日本薬剤師会会長 山本信夫

少子高齢化が急速に進む中、2025年をメドに進められてきた社会保障・税一体改革に続いて、人生100年時代を見据えた全世代型社会保障制度の構築と国民皆保険・皆年金の維持・継承を目指した改革への取り組みが始まろうとしています。
「経済財政運営と改革の基本方針2019」では、調剤報酬について、かかりつけ機能に応じた適切な評価や対物中心の業務から対人中心の業務への構造的転換の推進と、高齢者の多剤投与対策等も含めた適正な処方のあり方を検討すること、また、健康サポート薬局については、一般用医薬品等の普及などによりセルフメディケーションを進める中で効果を検証しつつ、取り組みを進めていくこととされました。
薬剤師・薬局には、患者、住民との関わりの高い対人中心の業務に転換し、必要かつ適切なサービスを提供すると共に、医薬品・衛生材料等の供給拠点として地域の医療提供体制に貢献することが求められるということです。
一方、昨年12月に公布された改正医薬品医療機器等法では、調剤の場とされてきた薬局の役割を拡大し、一般用医薬品等も視野に入れた全ての医薬品の供給施設として再定義すると共に、薬剤師に対しては医薬品の服用期間を通じた服薬状況の把握や指導を行い、必要に応じて医師等に情報提供するよう努め、薬物療法の最適化に寄与することが基本的機能であることとされ、機能別の薬局認定制度(地域連携薬局、専門医療機関連携薬局)が導入されることとなりました。
これにより、住民が住み慣れた地域で安全に安心して医薬品を使うことができるよう、薬剤師・薬局が全ての医薬品の使用状況を一元的・継続的に管理して薬物治療の責任を担うこととなり、本年4月に予定されている診療報酬・調剤報酬の改定の方向性も、これらを反映したものになることが想定されます。
改正薬機法には、わが国に薬剤師と薬局制度が導入されて130年が経過する中で、時代の変化に即した社会的ニーズに適合した薬剤師・薬局のあり方が示されています。
本改正を薬剤師・薬局が時代の要請に的確に応えていくための視点を転換する機会と受け止め、患者・住民が使用する医薬品の一元的・継続的な薬学管理指導と薬と健康等に関する相談に対応し、医薬品等を過不足なく供給すると共に、セルフメディケーションを支援する、かかりつけ薬剤師・薬局の推進に引き続き力を尽くしていく所存です。