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製販後調査、経営層に強い意識を

2025年03月07日 (金)

 2025年度は、医薬品の臨床試験実施基準となるGCP省令改正が行われるが、製造販売後調査の改革も進む年になるかもしれない。使用成績調査に偏りすぎだった新薬の追加の安全性監視活動から、それぞれの医薬品の特徴に根ざした合理的な調査へとシフトしていく必要がある。

 契機となったのは、厚生労働省の「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」だ。製販後調査に関して「単に治験の症例数が少ないことや一部の患者集団における情報が不足していることのみがリサーチクエスチョンである場合には、使用成績調査を実施する根拠となるものではない」と記載され、全例調査についても「単に日本人の治験の症例数が少ないことのみを理由とした全例調査は、原則として行わない」との方針が明示された。

 これに基づき、厚労省は昨年7月に通知を改訂した。日本製薬工業協会が実施した調査では、その後の半年間で製販後調査における全例調査の実施割合が半減し、製販後データベース調査が大幅に増加する結果が示された。現場に変化が見られたのは大きな前進と言える。

 世界から見ても独特な日本の製販後安全監視は、市販直後調査に加え、製販後データベース調査、製販後臨床試験といった多様な手段を用いることで発展が期待されていたにも関わらず、画一的な手法に依存していた側面がある。

 製販後における追加の安全性監視活動で明確な検討事項(リサーチクエスチョン)が設定されないまま、再審査のために本来必要のない使用成績調査が行われてきたのが問題だった。本来は自発報告を補完するとの位置づけであったがその役割を果たしておらず、企業や医療機関にとっても情報収集にかかる負担が重かった。

 各社が競争に鎬を削る臨床開発に比べると、製販後安全性監視は逸脱がないようルールに基づいて実施していればいいという意識が企業経営層にあり、プロセス改善が進まなかったのではないか。

 医薬品医療機器等法の改正案でも、個々の医薬品の承認条件として製造販売業者に実施を指示していた医薬品リスク管理計画(RMP)を法律に位置づけることで、安全上の懸念発生時に迅速で医薬品やリスクの特性に応じた対応を可能にする方針だ。再審査期間に関わらず、安全性監視やリスク最小化の内容、実施状況に応じてリスク管理の期間を設定できるという。

 つまり、企業の主体的な取り組みによってリスク管理の期間を再審査期間よりも短縮することが可能となり、事業の効率化に大きく寄与することが見込まれる。

 製販後安全対策の改革は医薬品に関わる製薬企業や医療機関、何よりも患者に大きな利益をもたらす。日本が世界を先導できる領域であり、製薬企業の経営層にはリーダーシップを発揮してほしい。



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