薬学のエキスパートを養成へ

村木氏
京都薬科大学は、近年、社会人向けの生涯教育に力を入れている。卒後教育講座や臨床推論ステップアップ講座、実務支援セミナー等を展開するほか、リカレント教育として履修証明プログラム「Lehmann(レーマン)プログラム」を開設。高い専門性を備えて、今後の医療を牽引する薬学のエキスパートの養成を目的とし、薬剤師のステップアップを支援している。
専門・認定薬剤師資格取得に必要なスキルを各1年のコースで支援する。薬学的視点に基づいた症例解析や症例報告書の作成技能を学ぶ「症例報告書作成コース」、適切な研究計画を立て実践する技能を学ぶ「研究計画・実践コース」、分かりやすい論文を執筆できる技能を学ぶ「論文作成コース」の3コースを展開する。
コース修了後に、別コースを継続履修する履修生も年々増加。コースは個々人のレベルで受講できるよう、初年度は症例報告書作成コースからスタート。その後、研究計画・実践コースから、論文作成コースに進む人も増えており、今年度は履修生から、社会人大学院に進学する人も出てきている。
講義や演習のみならず、同大教員が指導教員(メンター)となり、履修生と対面とオンラインで面談しながら指導しているのが特徴。
大学教員がメンターとなり履修生に対し、eラーニングや大学で実地による講義や演習による履修証明プログラムで、2020年の開講から5年目となり、全3コース全てを修了した履修者の中には所属する病院グループ内で優秀論文賞を受賞したり、社会人大学院に進学したりするなど徐々に履修の成果が現れてきている。
レーマンプログラムについて京都薬大生涯教育センター長の村木優一氏(臨床薬剤疫学分野教授)は「社会で活躍するリーダーを養成することが目的。研究対象を論理的思考で評価し、発信していけるアカデミックスキルを身につけることで将来的な大学院進学や学位取得につなげるプログラムとして位置づけている」と話す。
プログラムの特徴はメンター1人に履修生1~3人程度の少人数制を採用しており、丁寧な個別指導が受けられる点。講義で学んだことを演習で深めるなど体系的に学ぶことで、根拠に基づく医療の実践にもつながる。また、様々な病院、薬局で働く薬剤師が集まるため履修生同士の交流が図れるほか、コーチングや人工知能(AI)、ICTの活用など多様な教養科目で、リーダーに必要な素養を身につける機会もある。
履修生の多くは、社会人大学院への進学を検討。同プログラムの履修により、研究計画書や論文作成手法などを学ぶことで、大学院進学後にも博士課程習得を達成できるスキルを身につけられるよう支援している。
レーマンプログラムの履修者数は延べ40人ほど。履修理由としては病院薬剤師からは「自己流で研究計画や論文作成を行うのではなく、論理づけたプログラムで学びたかった」とする意見や、薬局薬剤師からも「日常的に症例に触れているが、それをどう形にしていけばいいのかが分からなかった。そのヒントを求めて履修した」との声が聞かれたという。
レーマンプログラムは22年度の大学基準協会の認証評価で、「リカレント教育を卒業生に限定せず、門戸を開いて活性化を図られている」という点で「Good Practice」に選定されている。履修者は卒業生も増やしつつ、他大学卒業生も受け入れることでシナジー効果が期待される。
今後、他大学の薬学部や医療現場とも連携を深め、卒後の臨床薬学教育の充実につなげたい考えだ。
同大生涯教育センターでは、レーマンプログラムとは別に25年度の生涯教育年間プログラムの中で「アカデミックスキル基礎講座」を新設し、9月7日に開催する予定だ。同講座では薬歴や症例報告における文章の書き方などの基本を学ぶ。模擬症例を用いて症例報告を作成し、その内容についてディスカッションし改善点などを拾い出す。また症例の見つけ方や認定・専門薬剤師の資格取得に必要な症例報告を学ぶ。
村木氏は「レーマンプログラムの症例報告書作成コースをもっと平易にした内容で開講する予定で、レーマンプログラムの入門編のような講座を体験することで、受講者がより深く興味を持ち、意欲につながれば」と期待する。来年度以降は、論文検索や統計解析の仕方などを取り入れる計画だ。
村木氏は今後について、「現状はしっかりとした仕組みを構築することに比重を置いている。そのことで履修生がリーダーとして現場で活躍できるようつなげていきたい」と展望している。
なお、レーマンプログラムの26年度履修生の募集は来年1月開始予定としている。
京都薬科大学/Lehmannプログラム
https://skc.kyoto-phu.ac.jp/