東京都健康長寿医療センターと島津製作所はこのほど、質量分析技術を用いて糖鎖がついたペプチド(糖ペプチド)を詳しく調べる手法を開発した。同技術によって「どの蛋白質の、どの場所に糖鎖がついているか」に加えて、糖鎖の末端にある「シアル酸」が、どのような向き・つながり方(結合様式)をしているかまでを区別できるようになった。同じ種類・数の糖からできた糖鎖(糖鎖組成)であっても、ついている蛋白質や部位によって、シアル酸のつながり方の割合が異なることが新たに分かった。今回の成果は、バイオマーカーの発見や、疾患の発症や進行のメカニズム解明に役立つこと期待が期待される。
以前、同センターのグループは島津製作所との共同研究で、N型糖鎖解析に利用できるSALSAの開発に成功している。そこで今回は、SALSAを用いたN型およびO型糖ペプチドの網羅的解析法の開発を目的として研究を実施した。
今回研究で開発した解析法は、酵素消化により蛋白質をペプチドに断片化し、ペプチドに含まれるアミノ基をジメチルラベル化により保護した。これによって、脱水縮合反応であるSALSAで生じる副生成物を抑制することができた。その後、SALSAによるシアル酸の誘導体化を行った。誘導体化後にサンプルを二つに分け、条件の異なる親水性クロマトグラフィーによりN型糖ペプチドとO型糖ペプチドを濃縮して液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC-MS/MS)を行い、データベース検索により糖ペプチドを同定した。
この解析法を用いてアルブミンと免疫グロブリンGを除去したヒト血漿を解析した。その結果、79個の蛋白質に由来する831個のシアリル化N型糖ペプチド、29個の蛋白質に由来する75個のシアリル化O型糖ペプチドの同定に成功した。
同定されたシアリル化N型糖ペプチドの中には、同じ糖鎖組成でシアル酸結合様式が異なるものが多く同定されていた。三分岐で3個のシアル酸を持つN型糖鎖を例に蛋白質の修飾部位ごとに結合様式の割合を算出すると、同じ蛋白質であっても修飾部位によってシアル酸結合様式の割合が異なっていることが分かった。このような知見はこれまでの糖ペプチド解析法では得られない情報となる。
様々な疾患で、シアル酸の結合様式が変化することが知られている。今回の研究で開発された解析法は、シアル酸結合様式まで含めて糖ペプチドを網羅的に解析することができる。これによって、新たな疾患バイオマーカーの発見や病気の原因・仕組みの解明への貢献が期待される。
なお、共同研究の成果は、7月21日に米国科学誌「Analytical Chemistry」に掲載された。また、研究グループには島津製作所からエグゼクティブ・リサーチ フェローの田中耕一氏らが参加しており、同社製のシアル酸結合異性体判別用安定化試薬キット「SialoCapper-ID Kit」が用いられた。
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