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「6割分業」到来、問われる薬局業務

2010年07月09日 (金)

 分業率60%が目前だ。日本薬剤師会が「保険調剤の動向」において2009年度(09年3月~10年2月調剤分)の1月調剤分までのデータを示した。11カ月平均で60・6%に達しており、例年の推移から見て2月調剤分を合わせても60%台になると見られる。

 「5割分業」を達成したのが03年度。振り返れば、四半世紀前に「二桁分業」に突入した。その後ゆっくりと分業が進み、9年かけて95年度に20%台、その後の3年間で30%台、40%台、さらに2年間であっという間に50%台を達成と、急ピッチに分業が進んだ。

 しかし、51・6%という過半数に達した03年度からは、明らかに、その“勢い”は鈍化。6年間かけて「6割分業」を達成することになる。とはいえ、60%といえば、一つのメルクマールだ。堂々と胸を張れる「数字」になったといえよう。全てを投げ打って、分業に懸けてきた甲斐があったというものだ。

 このペースで進めば、任意分業下でも、14年度か15年度には“目標”とする70%分業が達成される可能性は高い。奇しくも「6年制薬剤師」体制への移行が始まる時期とも重なり、新たな分業時代を予感させる。

 一方、院外処方せん枚数も分業率の勢いに伴って、順調に伸びてきた。しかし、01~02年度あたりから枚数の伸びが鈍化してきている。ちょうど、分業率50%台に達してから、60%台に向けて足踏みを始めたころと符合する。

 とはいえ04年度には6億枚台に達し、その後、5年を経た09年度に7億枚台を達成する見込みだ。分業率60%台と共に、わが国の医薬分業の歴史において、大いに意義のある数値といえる。ただ、二つの数値が伸び悩みながらも、通過点とはいえ一つの目標を達成したのに対し、気になるのは調剤医療費の伸びであろう。

 厚生労働省のメディアスの2月調剤分のデータなどを参考にすると、09年度の調剤医療費は5兆5600億円に達するものと見込まれている。件数の伸びも低い中で、調剤医療費は着実に増加している。これが、どのように評価されるかが問題だ。

 最近、年収1億円以上の企業トップが話題となったが、日本調剤の三津原博社長が、わが国トップの製薬企業である武田薬品の長谷川閑史社長の役員報酬を抜き去り、かつ1部上場企業の高報酬社長リストの中でも上位に名を連ねた。ある意味“調剤”に対する注目・関心を高めるのに一役買った。

 先日ある学術集会が都内で開かれた際に、経済学者、特に医療経済を専門とする川渕孝一東京医科歯科大学教授が、薬局・薬剤師に向けた講演の中で、「負担に見合うメリット」を提示せよ、といったメッセージを発した。

 「分業のメリットの一つは医療費が安くなるということだったが、その辺はどうなんでしょう?」と、さらっとした口調と裏腹に、分業推進の“公約”を厳しく評価する。もちろん、その答えは一言では表せないのは、学者としては十分に承知した上で、一般国民・患者視点で発言したのだろう。

 かつて現役の厚生官僚が、薬局でのOTC薬販売に「私は説明など受けたことはない」と、国民視点で発信。今や新販売制度へと移行している。そこには、「現状・現実」を見詰め直し、OTC薬といえども医薬品としての販売のあるべき姿が具体的に反映された。かたや院内の分業、多職種協働が進む中、院外では誰のための分業なのか。過半数の意味を考えたい。



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