厚生科学審議会医薬品等制度改正部会(部会長:永井良三東京大学大学院教授)は26日、最終会合で、医薬品・医療機器総合の安全対策の強化や、新たな製品を迅速に医療現場へ届けるために必要な薬事法改正や運用見直しの方向性を合意した。添付文書の文案や改訂案を事前に厚生労働大臣へ届け出る義務をメーカーに課すほか、現行は承認時にしか設定できない市販後臨床試験の実施などの条件を、承認後に追加できるようにする方針を打ち出した。
ウルトラオーファンの制度化や助成率の引き上げなど、市場規模が特に小さい疾病領域に対する重点的な開発支援の検討も求めた。
また、治験の参加基準から外れた患者が未承認薬などにアクセスできるよう、個人輸入以外の新たな枠組みを創設すべきとの認識も一致した。ただ、承認取得のための開発を阻害する懸念があるため、新たな枠組みの導入に向けて関係者で丁寧に議論すべきとの意見も多く、患者の自己責任の範囲、副作用が生じた場合のメーカーや医療機関による補償のあり方などについて、今後に課題を残した。
焦点の医薬品等監視・評価組織については、薬害防止のための措置を行政に提言、勧告、意見具申する機能を有する法律に基づく第三者組織を設けるべきとの考え方は確認したが、具体的な形態には踏み込まず、厚労省に関係機関との調整を委ねる格好で決着した。これまでの議論では、審議会等の新設を制限する閣議決定方針を踏まえて厚労省が既存組織の活用を提案したが、薬害被害者らが新たな組織にこだわり、意見集約が難航していた。
このほか、開発が難しい医薬品を開発した企業に他品目の優先審査権を与える優遇措置を導入することも論点に上がっていたが、十分な検討時間がなかったため、判断を見送った。
同部会は、薬害肝炎検証・検討委員会の最終提言の実現を目的に、3月から10回の会合を重ねた。今後、文言を委員が確認した上で、年明けにも報告書を公表する予定。厚労省は次期通常国会へ薬事法改正案の堤出を目指すが、詰め切れなかった課題については、政務三役や与党の意見を聴いて対応を探る。