地域密着型が基本的姿勢‐「未病段階でのケア」実践に挑戦
シーガル調剤薬局本郷店は、長津雅則氏が神奈川県内で経営する3軒のうちの1店舗。JR根岸線・本郷台駅から徒歩16分、目の前はバス通りを挟んで市立小学校と、住宅街の一角に位置する。2011年8月に皮膚科、内科の2医院と共に医療ビレッジの中にオープンした。「われわれが目指す薬局は、間違いなく地域密着型」と話す長津氏は、介護保険制度が始まる前から居宅支援に取り組んでいる。現在は患者の検査値をグラフ化し、治療へのモチベーション維持・向上につなげつつ、今後の「未病段階でのケア」につなげたい考えだ。
本郷店は常勤の薬剤師3人、事務員1人の体制。応需処方箋の9割は隣接の皮膚科と内科だが、処方箋応需医療機関は50を超す。患者は皮膚科にかかる小児が多いが、老人も含め、診療科は幅広い。そのため在庫品目数は1300に及ぶ。「経営的にはあまり効率的ではないが、目指すのが地域医療であり、当然そうなる」と長津氏。
長津氏が最初に開設したのは鎌倉市材木座の店舗で17年経つ。集中率は4割、約100医療機関の処方箋を応需、在宅医療に力を注いでいる。介護保険が始まって12年ほど経つが、それ以前から取り組み始めた。
「鎌倉という土地柄、お手伝いさんが薬局に薬を取りに来るケースが少なくなかった。それでは患者さんと話せない。そこで『とにかく、僕が行きます』ということで、患者宅に行った」というのがきっかけ。
「何しろ介護事業者の方が(われわれを)求めている。彼らが薬の管理をするのは困難。薬剤師が入らないと医療の質というより、間違えた医療になりかねない。その助けになれば、薬剤師として本望だと思う」と語る。
本郷店は「最初から小児が多いことは想定していたが、当然親がいる。その方々の未病段階でのケアをしたい。また、私と同年代の両院の医師もその思いは同じ。ただ、今の段階では至ってない」と、将来的なテーマに掲げる。
かなり挑戦的なテーマに映る。しかし、長津氏は全店舗に導入したハイブリッジの電子薬歴システム「Hi-story」の機能を活用、特に鎌倉の店舗で、検査値のグラフ化を推進。患者の治療に対するモチベーションの維持・向上に活用している。「他の電子薬歴も進歩し、追いついては来ているが、臨床検査値を入力し、データを保存管理、かつグラフで見せる。これはいい」と評価する。
長津氏は「手入力で大変手間はかかる。糖尿病の方なら血糖値など必要な値を入れておけばいい。薬剤師は下手をすると薬しか見ていない。患者を見ていないのでは、いくらかかりつけ薬局・薬剤師といってもアホな話」と、かかりつけ薬剤師の支援ツールにも位置づけている。
“分かりやすさ”がポイント‐各種機能の柔軟性重視
本郷店では皮膚科、しかも小児が多い。「母親がキーパーソン。アドヒアランスをつけ、治療のモチベーションを高く維持してもらうことが大事。そのためにはいかに分かりやすい薬歴を書いておくかに尽きる」と話す。薬歴といえばSOAP形式が有名だが、「自由度がないので、うちはSOAP形式では書かない。自分の表現力で分かりやすく書いてくれと指導している」という。「Hi-story」はその自由度に対応する。
一方、指導においては「例えば、昔より先入観が減ったとはいえ、ステロイドに対し身構えてしまうケースが少なくない。どうして必要か、これを使わなかった場合にどうなるか、使うとどうなるか、しっかり『その先』を説明することが大切」と話す。皮膚科に限らず、全てに通じる重要ポイントだ。
また、長津氏は「Hi-story」の残薬管理機能にも着目。「理論上、何日分残っているかが一目で分かる。すばらしい」とし、医療資源の無駄排除につなげている。
在宅の関係では「処方医とケアマネージャーに報告書を出さなければならないが、自由度が高い報告書が作れる」と評価する。「服薬コンプライアンスや患者の睡眠、排泄、運動などといった『管理項目』は各薬局で違ってしかるべき。それを自由に設定できるようにしてもらった。また、複数の医師にかかり、処方箋を受けていると、そのデータも全て報告書にコンバートし、載せられるのが非常に気に入っている」という。さらに頻繁なアップデートを例に「使っている人間の声を大事にしてくれるのがありがたい」とハイブリッジの姿勢も評価する。
ハイブリッジ株式会社
http://www.hi-bridge.co.jp/index.html