プロセス開発から技術移転まで
発酵技術に強いパンラブスバイオロジクスは、製薬企業の天然物創薬をサポートする。1976年に設立し、菌株の大量培養や品質安定化技術をもとに、これまで数百件のプロジェクトを受託。今後は、バイオベンチャーに対して、菌株改良から大量培養までの製造プロセスを開発し、顧客の必要に応じて技術移転する包括的なサービスを提供していく考えだ。宋台生総経理は、「ベンチャー企業が発見した新しい菌株から、革新的な医薬品を創出できるようにしていきたい」と話す。
同社は設立後、1995年に米MDSファーマに統合され、発酵部門として「MDSパンラブス」に改称。2005年にMDSからスピンアウトしてパンラブスバイオロジクスが誕生した。世界各国の製薬・化学・バイオ・食品メーカーに対し、発酵技術を活用したサービスを提供している。宋氏は、「発酵技術による創薬支援では、世界のトップを走っている」と自信を示す。
製薬企業が保有する菌株を改良し、有機合成だけでは培養が難しい目的化合物を、発酵技術と有機合成を組み合わせた製造プロセスにより、安定した品質で収率良く製造する。発酵に精通した研究者を揃え、コスト競争力のある製法で短期間のうちに、目的化合物を大量培養できるのが強みである。
自社設備として、5L、10L、30L、125Lの発酵タンクを持つほか、2万4000種類の豊富な天然物ライブラリーを通じて、製薬企業の新薬探索研究に役立てる。これまで年に9~10件、数百件以上のプロジェクトを受託。米バイオ企業から依頼された案件では、粘性の高い遺伝子組み換えアスペルギルス株から、わずか3カ月で活性の高いラクトフェリン蛋白質を抽出するのに成功した。抗癌剤開発をターゲットに挙げ、台湾のGE薬大手企業と提携している。
製薬大手にはサービスが浸透している一方、中国などの新興国市場に照準を合わせ、バイオベンチャー向けに創薬支援サービスを展開していく方針。菌株の改良から大量培養のスケールアップ、品質保証まで検証した上で、依頼者に製造プロセスの技術移転を行う包括的なサービスで差別化を狙う。
発酵創薬で世界をリードしていた日本だが、アステラス製薬が撤退するなど以前とは状況が変化している。しかし宋氏は、「創薬のトレンドにもサイクルがあり、欧米製薬企業では発酵研究に再参入する動きも出ている」と述べ、今もなお発酵技術が重要な創薬アプローチとの認識を示す。40年の歴史で、技術的なノウハウは十分に蓄積しており、学会などを通じて、サービス認知に向けたプロモーションを強化していく考えだ。
この記事は、「薬事日報」本紙および「薬事日報 電子版」の2014年1月1日特集号‐時の話題‐に掲載された記事です。