国主導で探索研究から非臨床試験・臨床試験の拠点整備を進める台湾。2010年には医薬品の承認審査を行う「TFDA」を設置するなど、台湾で医薬品開発が行える環境が整いつつある。台湾内外のベンチャー・アカデミアのシーズを呼び込み、“ものづくり”の技術力を生かして、それを付加価値製剤として開発するほか、巨大な中国市場と密接な関係にあり、台湾経由で企業の中国進出を支援していく。グローバル時代を迎え、台湾をどう活用していくか。研究・開発・製造分野で台湾の受託産業を紹介したい。
台湾の人口は日本の約6分の1、面積は約10分の1に過ぎず、アジアでは治験先進国の韓国、巨大市場の中国に挟まれる。医薬品市場も約40億ドルとさほど大きくなく、日系製薬企業も販売機能だけを残し、製造拠点としては撤退している。
ただ、ここ数年でバイオ産業で力をつけている。07年頃に、基幹産業であるIT産業に陰りが見えたのを契機に、国策として食品・環境・製薬などに投資を行う。11年からは台湾のバイオ医薬品に関する政府の研究プログラムがスタートした。
台湾が目指すのは、探索研究から臨床開発、製造などのプラットフォーム化だ。政府系研究機関が最先端の研究を行い、そこで得られた成果は積極的に民間に技術移転し、橋渡しを行う。また、台湾外からシーズを導入し、ヒトへの有効性・安全性を検証するPOCを取得した後に製薬企業へ導出する。そのほか、20~30社のベンチャーキャピタルが創設されており、海外企業も資金調達を受け、台湾で研究開発を行う。
非臨床試験、早期探索臨床試験、後期の臨床試験を行える環境も整備され、専門性の高いCROも揃っている。国際共同試験の実施数は日本とほぼ変わらない実績があるという。医薬品の審査体制も欧米当局との連携で、開発から承認までの期間が短くなってきた。昨年にはPIC/Sに正式加盟した。
バイオ医薬品については、基礎から臨床までの開発支援体制が充実し、遺伝子組み換え蛋白の細胞株製造から量産化まで高品質に製造するCMOがサポートする。バイオシミラーへの参入を目指す日本企業も多いが、自前で事業基盤を構築するには時間がかかり、国内にはバイオ医薬製造を外部委託できる企業が少ないのが現状。こうした問題を解決できる可能性もある。
親日国と呼ばれるように、地理的に近く、日本に対する理解が深い。国交はないが、日本交流協会と亜東関係協会との間で薬事規制面で協力協定を結び、医薬品製造の許可審査の相互承認、医薬品の承認審査の統一化、第三国への事業連携に向けた協議が始まった。
台湾と中国は薬事面でも密接な関係にあり、台湾経由で中国進出するという選択肢が実現できれば、日本企業に大きなメリットになるだろう。
この記事は、「薬事日報」本紙および「薬事日報 電子版」の2014年1月1日特集号‐時の話題‐に掲載された記事です。