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テクニシャン制度の是非を問う

2014年10月17日 (金)

 薬剤師の業務を支援する人材として欧米で導入されているテクニシャンについて、日本でもその制度を導入すべきかどうか、様々な意見を耳にする。薬系学会のシンポジウムなどでも、話題に上ることが少なくない。

 欧米のテクニシャンは、薬剤師の助手的な存在として、ピッキングや薬剤の調製、事務的な業務などを行う。薬剤師は、テクニシャンの後方支援を得て、処方監査や患者との対話など、頭を使う業務に力を尽くせる仕組みだ。

 日本においてもテクニシャンを導入すべきだ、という声は強い。病院でも薬局でも、薬剤師は様々な業務に手を取られ、忙しすぎる。その上、薬剤師不足でマンパワーが足りず、十分な数の薬剤師を確保できる施設は少ない。錠剤の数をかぞえるだけの単純な作業は、薬剤師がやらなくても、できるなら他に任せたい。その代わりに学んだ知識や技術をもっと生かせる業務に集中したい――。

 そんな背景や思惑から、制度の導入を希望する現場の薬剤師は少なくないのではないか。薬剤師の確保に悩む薬局経営者も、テクニシャン制度はその解決につながり、人件費削減にも役立つと見込んで、導入を歓迎するだろう。

 実際には日本でも、事務員や補助員などテクニシャン的な人材は、以前から活用されてきた。積極的な病院薬剤部では、注射薬の取り揃えやピッキング、持参薬管理業務の一部などを委ね、薬剤師はそれを監査する仕組みを構築している。薬剤師のマンパワーを薬剤管理指導業務や病棟薬剤業務などに集中させて、医療の質や安全性の向上、医師の業務負担軽減などに貢献してきた。一方、薬局においても調剤の準備作業などを、事務員に担当させる施設が存在すると聞く。

 では今後、本格的にテクニシャン制度を導入すれば、バラ色の世界が待っているのか。単純に考えると、この制度は薬剤師業務の一部を他に譲り渡すものだ。薬剤師の職能が狭くなる恐れがある。

 今は薬剤師不足だが、いずれ薬剤師は余る時代になると見られる。少数精鋭でいいなら話は別だが、その雇用の受け皿はどうするのか。

 調剤報酬にも影響が出る。処方箋1枚当たりの技術料は下がるのではないか。制度導入で人件費は下がっても、売上や利益まで下がってしまっては元も子もない。薬局経営者はそこまで見通しているのだろうか。

 テクニシャン制度の導入と薬剤師の職能拡大は、車の両輪だ。職能拡大のメドが立たないうちに、制度を導入してしまえば、下手をすると自分で自分の首を絞めてしまいかねない。

 今後、薬剤師はどのような業務を担い、どのように社会に貢献するのか。その方向性を明確にし、実現可能性が高まった上での制度導入が、堅実な道筋だ。まず何より、薬剤師の職能拡大が先決ではないか。



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