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【バイオベンチャーを探る1】そーせい

2014年12月10日 (水)

“DRから製剤”への戦略転換‐日本発のグローバルベンチャー目指す

望月昭典副社長

望月昭典副社長

 そーせいグループは、既存医薬品や開発中止化合物の別適応症を探索する「ドラッグリポジショリング」(DR)から一歩進め、「製剤での差別化」で勝負する。原薬を粉砕してナノ粒子化する技術を獲得し、製剤工夫によって薬効や利便性の高い医薬品開発に挑む。新規作用機序薬の創製などリスクの高い事業には挑戦せず、既存薬の付加価値に徹底してこだわる。柔軟な発想から新たなビジネスを見つける“目利き”が最大の強みだ。

 同社は1990年に設立し、99年からDRの医薬品開発をスタートした。自社技術を持たない分、あらゆる選択肢の中からリスク分散が可能で、成功確率が高いビジネスモデルを追求している。

 海外とのネットワークも強みだ。田村眞一社長は英国に在住しており、ボードメンバーには元外資系製薬大手の経営幹部が名を連ね、国際色豊かな人材が揃う。

 きめ細かな情報収集体制によって、仏企業から緊急避妊薬「ノルレボ錠」を導入し、製品化にこぎつけた。さらに、2004年の東証マザーズ市場上場によって資金調達した約100億円を原資に、約200億円でDRのプラットフォーム技術を持つ英アラキス社を買収する積極的なM&Aを実施した。

 COPD治療薬「シーブリ」とその配合剤「ウルティブロ」は、注射剤として使われていた成分を吸入製剤として最適化した。ノバルティスに導出し、現在世界で販売中。ロイヤリティ収入としてそーせいに売上が計上され、13年度売上は20億円、営業利益は7億5000万円と軌道に乗る。望月昭典副社長は、「アラキスの買収がなければ、今の状況はない」と言い切る。大型製品として期待されるシーブリの特許満了は26年となっており、当面の事業の見通しが立った。

 安定的な収益が得られるようになった現在でも、とりわけ事業リスクを重視する。「同じ手法に依存しない」との考え方に立ち、DRに基づいたポートフォリオ戦略を見直す。「競合が現れて、DRとして有望な化合物が集められなくなってきた。今後先細りするのが見えている」(望月氏)。国主導でDRを推進する動きがある中、そーせいは競合が激しいレッドオーシャン市場になると判断。そこから抜け出すことを決断した。

 次の戦略として選んだのが、「製剤上の工夫を行い、既存医薬品に新たな付加価値をつける」。自社技術を持たない事業戦略を転換し、10年にアクティバスファーマを買収し、原薬の粉砕により、ナノ粒子化する「APNT」技術を獲得した。難溶性薬物を点眼剤に適用し、二つの開発パイプラインを保有する。さらに、新日本科学とは経鼻投与基盤技術を利用した医薬品開発で事業提携した。

 望月氏は、「他社から化合物を導入したり、そこに付加価値をつける場合に、われわれの中にあるDRの哲学が生きている」と話す。今期は売上33億円、営業利益20億円を計画。製品ポートフォリオを拡充し、海外展開も視野に入れ、目指す先は“日本発のグローバルバイオベンチャー”だ。

そーせい
http://www.sosei.com/jp/


この記事は、「薬事日報」本紙および「薬事日報 電子版」の2014年11月17日号に掲載された記事です。

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