経口薬でAMD治療に挑む‐世界初のドライ型用が大詰め
眼科疾患に特化したバイオベンチャー「アキュセラ」は、世界初の地図状萎縮を伴うドライ型加齢黄斑変性(AMD)の経口薬「エミクススタト」で実用化を目指す。探索からわずか3年で臨床入りし、第II/III相段階へと到達。飲み薬でAMDの治療を目指す挑戦は、大詰めの状況を迎えている。現在、大塚製薬と共同で2年間の安全性試験を実施しているが、窪田良社長は、「非臨床試験、臨床試験でも副作用を予測する結果がみられていない」と自信を見せる。
同社は、眼科医である窪田氏が2002年に創業した米国本拠のベンチャー。難治性眼科疾患をターゲットとする中、患者数が多く治療法がないAMDを開発すべき疾患に選んだ。
AMDは、全世界では約9割がドライ型、約1割が滲出型と大部分がドライ型が占める。滲出型AMDでは、血管新生を阻害する抗VEGF薬などが上市される一方で、ドライ型AMDで承認されている薬剤はない。エミクススタトはドライ型AMDを根治する治療法に挑んでいる。
作用メカニズムは、眼球の後部にある網膜部内で、光が電気信号へと変換するために必要な仕組み「視覚サイクル」の調節だ。窪田氏が視覚サイクルに着眼したのはワシントン大学留学時に、人間とその他動物の“種の違い”に関する講座を聞いたのが原点だという。
「なぜ鳥は明るいところでもモノを見ることができるのか。そのメカニズムが分かれば、視力が弱い人間を鳥のように進化させられるのではないか」。種差を利用することで治療薬開発のヒントにつながると考え、開発に着手した。
非臨床試験、臨床試験については、心電図のように電位変化を記録して波形から網膜の働きが正常かどうかを調べる「網膜電図」をバイオマーカーとして活用し、客観評価を行った。あらゆる動物種を対象に視覚サイクルを調べ、エミクススタトが視覚サイクルの調節に関与し、視力改善しているかを確認した。
手応えを感じたのは、臨床試験で「動物からヒトへのトランスレーショナルメディスン」を実証した瞬間。2005年に探索を開始し、08年に臨床入り、そして後期開発段階へと短期間で登りつめた。
16年中旬には第II/III相試験「SEATTLE」のトップライン結果を発表し、その結果を踏まえ、少なくともさらに1件の第III相試験を実施する計画。承認取得後には、自販体制へのこだわりも見せる。窪田氏は、「われわれが生み出し、開発を進めた世界初の医薬品であれば、それを一番良く分かっているわれわれの手で育て上げないといけない」と話す。
ベンチャーが治療法のない疾患で、化合物創製から前臨床・臨床開発、承認取得までをやり遂げる無謀とも思える挑戦だが、治験の最終段階までこぎ着けた。窪田氏は、「航海に例えるならば、コロンブスがスペインを出航し、カリブ海に入ったところ。なんとしても新大陸にたどり着きたい」と最後の大勝負に意欲を見せる。
アキュセラ
http://www.acucela.jp/
この記事は、「薬事日報」本紙および「薬事日報 電子版」の2014年12月8日号に掲載された記事です。
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