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【バイオベンチャーを探る3】サンバイオ

2016年01月07日 (木)

再生医療でヒトPOC取得‐中枢神経系では先頭走る

森敬太社長

森敬太社長

 2015年6月に東証マザーズに上場を果たしたサンバイオは、再生細胞薬の実用化を目指す。他家骨髄細胞を用いて量産化技術を確立しており、神経再生作用を持つ「SB623」では慢性脳梗塞に対するヒトでのプルーフ・オブ・コンセプト(POC)を取得。現在、大日本住友製薬と北米で共同開発を進め、2015年内には後期第II相試験に移行する予定だ。森敬太社長は、「再生医療のグローバルリーダーを目指し、将来的にバイオで主要な会社になっていきたい」と話す。

 同社は、2001年に米国で設立された再生医療バイオベンチャー。当初は日本発の再生医療技術を米国の恵まれた研究環境で早期の事業化を目指していた。そんな中、国内では2014年秋に薬事法改正が行われ、再生医療で期限付き条件付き早期承認制度が導入されたのを契機に、本社機能を米国から日本に移した。

 森氏は、「再生医療に関して世界で最も画期的な制度ができ、日本での再生医療市場に勝っていくことが世界で勝っていくために必要だと思った」と口にする。

 既に技術面のハードルは乗り越えた。他家細胞を用いた再生医療を実現する上で重要となるのが、体内に移入する際の免疫拒絶という課題。同社では、骨髄細胞を用いることで、一つの解決策にしている。細胞自体が免疫を抑える働きを持ち、森氏も「再生医療に理想的な細胞」と強調する。治療疾患領域では、免疫拒絶を引き起こしにくい中枢神経系・眼科領域に的を絞る戦略を取る。

 免疫抑制剤との併用が通常だが、「現在開発中の薬剤では、米FDAとの交渉の末、免疫抑制剤なしで投与することを認めていただいた」と森氏。再生医療で懸念される細胞の癌化リスクについても、安全性に関する問題は現段階で報告されていない。

 コストの問題もほぼ解決したという。再生医療の事業化では細胞の量産化技術を確立できるかが「死の谷」と呼ばれるほどの大きな関門。同社では1人のドナーから採取した骨髄細胞で約1000人分の細胞医薬品を生産。製造プロセスも構築した。

 開発品では、慢性脳梗塞を対象とした「SB623」が先行。国内では帝人にライセンス供与、北米では大日本住友と共同開発を進める。

 北米第II相試験では、薬剤やリハビリテーションが効かないような運動障害・言語障害を持つ患者が劇的に回復するなど高い薬効を示した。2015年内には北米で150人の患者を対象とした後期第II相試験をスタートさせる。

 他の適応症でも開発を進めている。外傷性脳損傷については、既にIND申請が受理済み。慢性脳梗塞で確認された安全性エビデンスをもとに、第II相試験から開始できる方向だ。その後にはドライ型の加齢黄斑変性、網膜色素変性、パーキンソン病、脊髄損傷、アルツハイマー病の適応で非臨床段階にある。

 中枢神経系の再生医療をめぐっては、世界を見渡すと鎬を削る競合相手が存在する。ただ、森氏は、「免疫拒絶や安全性の対応、コスト構造を見てもわれわれが一番だと思う」と言い切る。蛋白製剤のアムジェン、抗体医薬のジェネンテックが、バイオベンチャーから一気に世界の主要なバイオ企業へと駆け上がったように、目指す先は、「中枢神経系、眼科で先行し、再生医療のリーディングカンパニーになる」。開発候補品の中には「ブロックバスターの可能性を秘めたパイプラインが複数入っている」(森氏)と自信は十分だ。

サンバイオ
http://www.sanbio.jp/


この記事は、「薬事日報」本紙および「薬事日報 電子版」の2015年8月17日号に掲載された記事です。

バイオベンチャーを探る1 目次

バイオベンチャーを探る2 目次

バイオベンチャーを探る3 目次



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