地域に根ざした訪問薬剤管理指導実践‐増加一途の“一包化”業務を効率化
東京の多摩・調布市で3店舗を運営するティー・エム・シー(創業1992年、代表者戸塚淳司氏)の中心的店舗である「丘の上薬局 多摩センター店」(中根和弘店長)は駅前からサンリオピューロランドにつながる商業施設の一角、医療モールビル1階に位置する。場所柄、一般用医薬品から化粧品、衛生関連用品、健康食品など多彩な地域住民のニーズに応える品揃えを維持しつつ、月6000枚ほどの処方箋に対応。さらに地域住民の高齢化を背景に、バイクを活用したきめ細かな訪問薬剤管理・指導を推進、地域に密着した薬局として着実な歩みを進めている。
「外来から在宅へ」踏まえて
同社は戸塚薬品として、92年に設立され、94年に主な処方元となっている「田村クリニック」が多摩センター駅近くに開業するのを機に、「丘の上薬局 多摩センター店」を出店、同時に本社も多摩市に移転した。さらに05年、初代社長がエスキューブ社長も兼任、東京近郊の薬局・ドラッグストア有志企業20社による物流・システム会社「エスキューブ」を設立。現在も加盟薬局等の物販を支える後ろ盾だ。
現「多摩センター店」は09年、田村クリニックが「一人開業医」から訪問看護ステーションなどを擁する「医療モール」へと進展する中で、同クリニック入居ビルの1階に居を構えた。その4、5階を占める同クリニックでは内科だけでも消化器・呼吸器・血液・糖尿病・腎臓内科、脳神経外科など20人ほどの専門医を擁している。それだけに「多摩センター店」で取り扱う医薬品の種類は多様。GE対応もあり2300品目に及ぶ。
当初は物販を主体にしてきたが、医薬分業の流れを受けて併設型として進展。応需処方箋は月に5500から6000枚に達する。
同店舗では薬剤師15人、事務および販売員12人のうち6人が登録販売者だ。物販売上は3割を占め、未だ大きな柱の店内には、OTC医薬品やオンリーワンを目指した専門性の高い敏感肌用化粧品や健康食品、在宅医療関連の商材など8000品目が所狭しと並ぶ。
さて、多摩地域では「健康な老人を増やそう!!」と多摩市・行政・地域住民・三師会が中心になり13年末、一般社団法人「多摩マイライフ包括支援協議会」が設立された。同社も薬局・薬剤師としての役割を果たすべく参画している。
その具体的対応の一端が、専任薬剤師による訪問薬剤管理・指導だ。3年前に「田村クリニック」での在宅事業部の立ち上げを機に、同店舗内に「在宅薬剤師チーム」を設置。当初20人程度から始め、現在では1カ月に500人の在宅患者を担当している。
有用な多彩“印字パターン”
長年、田村クリニック、同店舗に通っていた患者が在宅療養に移行する事例が増える中、「外来から在宅へ」という取り組みは自然な流れだった。とはいえ、これほどの患者に対応できるのは、タカゾノの全自動分割分包機「Crestage-Pro」の支えがあるからだという。在宅患者のほとんどで「一包化」需要があり、昨年、導入に踏み切った。そのきっかけの一つが、薬学生の実務実習だという。
例年、「エスキューブ」として、事務実習の一環として「タカゾノ 東京本社ショールーム」の見学実習を取り入れている。最新の調剤機器・システム製品に触れさせたいという思いからだ。昨年、学生の一人が、「こういう凄い機器を導入する薬局でぜひ仕事をしたい!」と効率性と調剤過誤軽減の技術の高さに感動して帰ってきた。
旧来機での一包化対応に限界があったこともあり、「タイミングが合った」という。もちろん、戸塚社長が掲げるローコストオペレーション、在宅医療時代など諸条件から総合的に「ぜひ必要な機器だ」と判断された。
一包化調剤では過誤が起きやすいことを危惧していた中根氏にとって、調剤過誤を防ぐためのRFIDチップが付いた専用タブレットケースが、しかも100カセット搭載可能という「Crestage-Pro」には大きな有用性を実感している。ケースを入れ替えてもRFIDチップに設定されている薬品名が認識され、煩雑な現場の負担軽減と安全性が同時に得られていると評価する。
さらに、一包ごとの患者名と定時薬、用法用量など印字内容は共通するが、「薬品名を入れてほしいとの要望も半分くらいある」という。多様な施設を抱える同店舗にとって、他社レセコンとのスムースな連携のもと、「各施設の要望に応えられる印字パターンが数多く網羅され、しかも、Crestage-Proのタッチパネル上で簡単に操作・選択ができる」ことは大きな威力だとも指摘する。
効率化という面では、薬剤師による旧来機による作業では1時間で処方箋5枚だったが、若干の手作業を要する場合も含め、処方箋入力から印字パターンを選択し、OKボタンを押す作業で済む「Crestage-Pro」では、処理能力が3倍と格段に向上した。現在は一日40枚、多い時には50枚の一包化が行われている。
出来上がった薬は薬剤師が、“宅配”三輪バイクで届けるのが当初からのスタイルだ。「団地を含め、迷路のような道が多く、しかも駐車禁止の場所ばかりだから」だという。現在は、道交法上“自動車”仕様の三輪バイクを活用している。
訪問先は近隣の老健施設など6施設、団地を中心にした個宅の約50人。順番待ちの状態だが、主治医らと話し合いの末、50人前後で調整している。「ある程度枠を守って取り組まないと質の低下につながる」と指摘する。
OTC医薬品など売場も地域密着型を重視している。「接客重視でOTC医薬品の販売が発展してきた店なので説明ありき。いまは売上が下がってきているが、お客様の状態を根本において、納得して買っていただくのでリピート客が多い」という。また、最近では大手化粧品会社とコラボし、施設入居の高齢者に“お化粧サービス”を実施した。中根氏は「年を取っても、お化粧すると凄く刺激になる。大変好評をいただきました。今後も地域に根ざして、このような活動を展開していきたい」と語る。
ティー・エム・シー 丘の上薬局 多摩センター店(タカゾノ)
http://www.takazono.co.jp/products/sanzai_jozai_bunpouki/crestage_pro.html