今年も師走に入ったが、顧みれば、ノバルティスファーマやファイザーに対する厚生労働省からの業務改善命令など、大手製薬企業の信用・信頼が大きく失墜した年でもあった。安全管理、副作用報告などは医薬品メーカーとして基本中の基本であるにもかかわらず、どこかで何かの緩みが生じた結果であろう。ファイザーは業務改善計画書を既に提出し、ノバルティスは是正措置、再発防止策の検討に着手しており、信頼回復へ歩み始めている。
そして、一般財団法人化学及血清療法研究所(化血研)の承認書と製造実態の齟齬(そご)に関する事件である。厚労省は6月5日、化血研に対して血漿分画製剤12製品26品目の出荷停止を指示した。
その後、ワクチン製剤等についても9月18日付で出荷自粛を要請すると共に適切な報告を求めていた。
今回報告された齟齬がワクチンの品質、安全性等に重大な影響を及ぼす可能性が低いとの見解が専門家から示されていることから、厚労省が重大な影響を及ぼすような齟齬ではないと判断している。
厚生科学審議会感染症部会は、感染症法と予防接種法で規定されている感染症の予防および治療に必要な製剤であって、他社製品での代替が困難か供給量の著しい不足等が見込まれる製剤について、公衆衛生対策上の必要性の観点から、速やかな出荷の必要性、緊急時における使用の必要性等について議論し、10月21日に意見をまとめた。
その結果、季節性インフルエンザワクチン「インフルエンザHAワクチン“化血研”」(化血研シェア29%)のほか、沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオ(セービン株)混合ワクチン「クアトロバック皮下注シリンジ」(同64%)、B型肝炎ワクチン「ビームゲン注」(同80%)、日本脳炎ワクチン「エンセバック皮下注用」(同36%)、A型肝炎ワクチン「エイムゲン」(同100%)について、代替が非常に困難で供給不足が生じる状況にあると指摘していた。そして、厚労省が精査した結果、インフルエンザワクチンは10月21日、4種混合ワクチンは11月26日に出荷自粛要請解除となった。
11月27日には、化血研の宮本誠二理事長が第三者委員会調査報告書を受領したことと公表時期についてコメントしている。その中で、「今回の事案は製薬企業として社会的信用の失墜に関わる重大な事態と反省し、事案の真相解明と信頼回復のため独立した第三者委員会を設置した」としている。
生命に直結する医薬品は信用の上に成り立っている。たった一つの事件が多くの仲間を巻き込み、関係者皆が社会からの冷たい視線に晒されてしまう。来年こそ、信用に影響するこのような事態が繰り返し生じないことを切に願うばかりだ。